取り組みの概要
気候変動は最も緊急性が高い地球環境問題の一つと認識しており、気候変動を始めとした地球環境問題を経営の最重要課題の一つとして捉えています。当社は、パリ協定を始めとする国際的方針、日本国が決定する貢献(NDC)や気候変動に関連する法規制や様々な政策を支持し、気候変動による事業環境の変化への適応を更なる成長機会として捉え、当社方針や具体的な取組みに落とし込んでいきます。
伊藤忠グループ環境方針においても「2. 気候変動への対応: 温室効果ガス(GHG)の排出を削減し、エネルギーの効率的で持続可能な使用を促進し、気候変動の緩和及び適応に貢献する商品及びサービス等の開発、提供に努める。」と定め、グループ全体で気候変動に対応しています。
気候変動対策の短中長期の目標
2021年、取締役会での審議を経て、気候変動対策の中核目標として以下のように2030年・2040年・2050年までの温室効果ガス(GHG)排出量削減目標を策定しました。本目標は日本国NDC目標に沿うものであり、取締役の積極的な関与のもとで回避可能な排出量は削減し、削減貢献ビジネスを積極的に推進することで達成を目指します。
【短期目標】
<対象>
・Scope1/2(伊藤忠商事)
<目標>
・2021年度排出量6,023t-CO2から2025年度排出量5,785t-CO2
【中長期目標】
<対象>
・Scope 1/2/3(伊藤忠商事及び子会社)
・化石燃料事業・権益(伊藤忠商事・子会社・関連会社・一般投資)
<目標>
・2030年までに2018年比40%削減を実現
・2040年までに2018年比75%削減を実現し、GHG排出量削減に貢献するビジネスの積極推進を通じ「オフセットゼロ※」を目指す
※オフセットゼロ: 削減貢献量が当社GHG排出量を上回る状態
・2050年までにGHG排出量「実質ゼロ」を実現
再生可能エネルギー利用の推進
自社オフィスで再生可能エネルギーを活用するほか、発電・蓄電池事業を通じて再生可能エネルギーの普及に努めています。
【自社での再生可能エネルギーの利用】
・東京本社ビルの屋上及び東京本社ビルに隣接する伊藤忠ガーデンの屋根に太陽光発電パネルを設置し、2010年3月より発電を開始
・東京本社では2020年1月分より非化石証書を組合わせた実質CO2フリー電気を調達
【再生可能エネルギーの普及促進】
・持分発電容量に占める再生可能エネルギー比率を2030年度までに20%超に引き上げる方針
・風力発電、太陽光・太陽熱発電事業、地熱発電事業などを幅広に国内外で実施
・東京都との連携による日本初の系統用蓄電池専業ファンドも運営
エネルギー効率の向上
物流について省エネ法の定める特定荷主として毎年中長期計画書を国へ提出しており、その中で、以下のエネルギーの使用の合理化に関する全社計画を策定しています。
【定性目標】
・改善余地のある輸送効率の低い手段を中心に実態調査を行い、適正輸送手段の選択・適正輸送ルートの選択等を実施し、積載効率向上と、エネルギー消費原単位低減を推進する
・上記を実現するために、貨物輸送事業者との協力体制強化を推進する
【定量目標】
・5年度間の平均エネルギー消費原単位を年1%以上削減
スコープ3を対象とした取り組み
気候変動に特化したリスクマネジメントプロセスの1つとして、当社Scope1/2及びScope3の実績を8つのカンパニーごとに毎年集計しています。集計結果は経年評価もできる形で取り纏め、カンパニーが決裁した後、サステナビリティ委員会及び取締役会へ報告しています。このプロセスにより、取締役会が中長期的視点でGHG排出量削減目標達成に向けた進捗状況を監督し、新たな戦略見直しにも活用しています。
また当社はScope3を含むGHG排出量削減目標を達成するため、バリューチェーン上の仕入先・販売先・委託事業者・事業パートナー等との対話を通じて気候変動への取組みを推進することで、気候変動リスクの低減に努めています。
温室効果ガス削減に関するその他の取り組み
再生可能エネルギーに係る取組み以外にも、以下のような事業により国内外のGHG排出量の削減に貢献していきます。
【燃料転換】
・アンモニア燃料船開発及び保有運航モデルの創出、舶用燃料供給事業、発電燃料代替としての利活用、カナダ等での製造販売事業等を推進
・航空会社向け持続可能な航空燃料(SAF)、及びリニューアブルディーゼルの販売
・デンマークの企業と共同でグリーン水素バリューチェーン構築を推進
・パイナップル、バナナ等の食品残渣を活用した循環型クリーンエネルギー(バイオガス発電)の活用
・ケニアの家庭での調理燃料転換によるカーボンクレジット創出事業を行う企業と長期オフテイク、共同販売に関する契約を締結
【CCUS】
・日本 CCS 調査株式会社に出資、同社を通じCCSの調査・実証を支援
・オーストラリアMCi Carbon社が有するCO2固定化技術の商業化を目指し、国内外の取引先企業と協業
・国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に参加し、液化CO2輸送技術の研究開発・実証事業を実施
【低炭素技術】
・鉄鋼業界のグリーン化に貢献する低炭素還元鉄サプライチェーン構築を推進
森林・土地利用・農業等の自然環境を対象とした取り組み
当社は森林保護に関連するコモディティおよび農産物として以下のような商品を取扱っています。自然環境への影響を抑えつつ、守るべき自然林の保護と森林資源の持続的な利用を継続するため、調達方針をそれぞれ定めています。これらの方針は年に1回は見直し、必要に応じて改訂しています。
・木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品
・天然ゴム
・パーム油
・木質バイオマス燃料
・カカオ豆
・コーヒー豆
各商材に関する取組みの詳細は、以下のウェブサイトをご確認ください。
https://www.itochu.co.jp/ja/csr/society/value_chain/activity/index.html
気候変動に関する情報開示の推進
【CDP】
企業の環境情報開示におけるグローバルスタンダードとして全世界で広く認知されているCDP気候変動・水セキュリティ・フォレストの質問書に回答しています。CDP気候変動については、2023年度にA-評価を受けました。
【TCFD】
気候変動に関連する財務情報の開示を促すTCFDに賛同、TCFDコンソーシアムにも参画しています。同コンソーシアムを通じ培った知見を踏まえ、気候変動が当社事業に及ぼすリスクと機会の開示の充実に継続的に取組んでいます。
詳しくは以下のウェブサイトをご確認下さい。
https://www.itochu.co.jp/ja/csr/environment/climate_change/index.html
市民の気候変動への理解・行動を促す取り組み
当社東京本社敷地内に、気候変動問題を含むSDGsについて広く市民に情報発信を行うITOCHU SDGs STUDIOを設置しています。SDGsを様々な角度から切り取った情報発信・体験の場をつくり「人と商いと地球」をつなぐカルチャープラットフォームとして、脱炭素に係る展示コンテンツなどを展開しています。
このほか、地域の小学生向けに環境に関する特別授業も実施しています。
適応対策およびレジリエンスの向上
水関連ビジネスを重点分野と位置付け、海水淡水化事業や水処理事業をグローバルに展開し、世界各地の水問題の解決への貢献を目指しています。
気候変動の影響を強く受ける事業については、シナリオ分析をもとに対応策を講じ、国内外の事業のレジリエンス向上に努めています。
各事業におけるシナリオ分析の結果と対応策の詳細については、以下のウェブサイトをご確認ください。
https://www.itochu.co.jp/ja/csr/environment/climate_change/index.html
金融を通じた取り組み
当社の各カンパニーの年次財務計画は最終的に取締役会が気候変動課題を含む ESG の観点から総合的に分析・審議した上で承認します。移行計画に基づく財務戦略を促進するため、SDGs に貢献する事業に資金使途を限定する資金調達計画を策定しています。
なお、石炭関連ビジネスについて、新規の石炭火力発電事業の開発及び一般炭炭鉱事業の獲得は行わないことを取組方針として公開しています。
このほか、サステナブルファイナンスとして、環境やSDGsに配慮した事業に資金使途を限定したグリーンローン、SDGs債による資金調達を行っています。