取り組みの概要
「機械を作る機械(マザーマシン)」と言われる工作機械によって生み出される機械や部品の精度には、それを生み出す工作機械の精度を超えることができない、という母性原理が働いています。よりよい機械や部品は、よりよい工作機械によって生み出されるため、工作機械の技術が他の多くの産業に波及していくという独自の役割と機能を持っています。
そのため、あらゆる産業のお客様の課題解決をサポートし、生産性と効率性向上につながる商品と、サービスを提供するための技術革新に不断の努力を行うという、私たちの事業活動そのものが社会貢献につながる活動と考えています。現在、世界中では500万台以上の工作機械が稼働しており、工作機械の省エネは地球環境に大きな影響を与えます。
DMG MORIは長年にわたって工作機械のエネルギー効率を最適化し、加工条件の向上や、加工時間の最短化を行うことで環境配慮商品の開発、普及に努めています。また、世界中の事業所に太陽光発電やバイオマス熱電などを導入することで、CO₂排出量の削減に積極的に取り組んでいます。
サステナビリティページ
気候変動対策の短中長期の目標
気候変動への対応にさらなる実効性を持たせるため、当社は2030年までの温室効果ガス排出削減目標を設定し、2021年11月に国際的な環境団体「SBTイニシアチブ」による認定を取得しました。さらに2024年6月に、SBTイニシアチブから「ネットゼロ」目標の認定を取得しました。本目標では、2019年の温室効果ガス排出実績値を基準として、2030年までにScope 1及びScope 2で46.2%の排出削減、Scope 3で27.5%の排出削減を、それぞれ目標値として設定しています。2050年までの長期目標においては、Scope 1からScope 3合計で90%の排出削減を設定しています。
再生可能エネルギー利用の推進
グループ全体での再生可能エネルギー利用率の向上に取り組んでいます。グループ最大の生産拠点である伊賀事業所(三重県伊賀市)では、2025年2月より、パネル設置面積 約130,000 m²、パネル容量 約13,400 kWの自家消費型の太陽光発電システムで全量の発電を開始しました。年間発電量は約14百万 kWhで、伊賀事業所の年間電力需要の約30%を賄います。これにより、年間約6,000トンのCO₂排出量を削減することができます。また、世界最大級の自動化システムソリューション工場として2025年4月に開所した奈良事業所にも、伊賀事業所と同様に、発電システムを導入し、2024年11月より、パネル設置面積 約29,000 m²、パネル容量 約3,000 kW、年間発電量約3百万 kWhで、奈良事業所の年間電力需要の約30%を賄います。これにより、年間約1,300トンのCO₂排出量を削減することができます。
その他にも、2040年までに再生可能エネルギーの利用を100%とすることを目標に設定し、2025年度中のRE100参加に向けた取組も実施しています。そのため、従来は1年契約としていた再エネ電力の契約内容を見直し、長期安定調達を目的として、20年契約のオフサイト型バーチャルPPAを締結し、国内電力需要の8割以上をカバーできるよう準備を進めています。
エネルギー効率の向上
当社では、オフィスの省エネに取り組んでいます。各事業所および工場に、LED照明を全面採用しています。また、工作機械で精度よく加工するためには、周辺温度は20~23℃である必要があります。この恒温状態を実現するために、当社の工場は気密性が高く設計されています。これは空調機器の省エネにもつながります。無窓、かつ断熱外壁の生産工場として、太陽光や外気温度変化による影響を極力低減すると共に、室内天井にはデリベントノズルを設け、気流を作って攪拌し、空調効率を高めています。加えて、工場屋根に設置した太陽光パネルによる遮光・断熱(空気層)効果により、室内の温度変化も2~3℃低減でき、空調用電力を低減しています。
スコープ3を対象とした取り組み
2030年までのCO₂排出量削減目標達成のためには、Scope 1からScope 3までの全過程からの排出量の約40%を占めるScope 3の上流でのCO₂排出削減が重要です。そのためにはパートナー企業の協力が不可欠です。2021年には、伊賀事業所でパートナー企業向け説明会を開催しました。また、2024年よりパートナー企業が無料で使用できる排出算定ツールCozeroを導入し、パートナー企業において工作機械部品の製造活動でのCO₂排出量を可視化し、排出削減目標とそのための施策を作成し、協働してPDCAサイクルを回すことによりCO₂排出削減を進めていきます。
部材調達のロジスティクスにおいては、ミルクラン方式の採用により輸送効率の改善を図りました。また、パートナー企業と協業して、鋳造(素材)~切削加工~組立~出荷までのサプライチェーンをローカルエリア内に集約して、輸送に伴うリードタイムやコスト、CO₂排出量を低減する取組なども行っています。
温室効果ガス削減に関するその他の取り組み
当社では材料・部品の調達から廃棄に至るまでのライフサイクル全般において、環境配慮への対応が必要と考えています。 そのために、新製品の開発レビューの審査基準には、「従来機種よりも環境負荷を低減していること」を審査要件に加えるなど、環境負荷を従来の製品よりも少なくする新機種の開発を進めています。製品の消費電力削減や小型化・軽量化などはもちろん、複数の機械を1台に集約して効率的に加工を行う工程集約できる機種を開発することにより、製品のライフサイクル全体で、従来機種よりもCO₂排出量など環境負荷が低減できるよう取り組んでいます。また、有害化学物質の不使用や削減を進め、環境への影響がより少ない部品・素材の調達を積極的に推進しています。
森林・土地利用・農業等の自然環境を対象とした取り組み
2017年12月にまほろばファーム株式会社を設立し、伊賀事業所近郊の耕作放棄地を開墾して、2019年からワイン用葡萄の栽培を開始しました。圃場を少しずつ増やしていき、現在5ヘクタールで5,300本の葡萄を栽培しています。2022年には、9品種合計3,500 kgの葡萄を収穫しました。
また、伊賀や奈良などの事業所内および周辺に桜を植樹しています。
さらに、2022年5月に伊賀工場に設置したバイオマス発電では、近隣の伊賀・青山地域の未利用間伐材を燃料チップとして使用しています。これにより、地域の森林整備や林業振興にも貢献しています。
気候変動に関する情報開示の推進
弊社では、非財務情報の開示に積極的に取り組んでいます。
当社は、TCFDの提言に準拠した気候変動関連リスクおよび機会に関する項目について背局的に開示するという趣旨に賛同しています。
毎年CDPの質問票に回答しており、2024年には気候変動カテゴリーにて初のAリスト入りを果たしました。また、水カテゴリーは、A-の評価をいただきました。2025年には、CSRD、SSBJに則った情報開示にも取り組む予定です。
適応対策およびレジリエンスの向上
2023年2月より太陽光発電を段階的に立ち上げており、2025年1月からは、パネル容量13,400 kW全量をフル発電しています。余剰電力は蓄電池(1,000 kWh)に蓄え、停電時の初動対応として、災害対策本部などに対し、空調・照明はじめの防災・保安用負荷を4~8時間供給します。また、その前には自家発電機(800 kW:工場フル操業時稼働)の併用が可能なため、太陽光発電とのハイブリッド運転で合計最大出力容量は約8,000 kWになります。これにより長期停電時にも72時間以上の継続運転が可能となります。また、2024年6月には導入したEV(電気自動車)やPHEV、外部給油設備も活用し、災害停電時には社内外からの救援や近隣の避難者対応にも役割を担わせました。さらに、自家発電機と蓄えた燃料についても、自力で十分な量を確保しており、自家発熱機能を稼働し、動力会社からの買い置きがなくても(ディマンド・リスポンス)、周辺地域への安定した供給が維持できるよう備えています。
金融を通じた取り組み
従来は、採算性にフォーカスして費用対効果を試算し、設備投資の可否を経営判断してきましたが、2024年より、「社内カーボンプライシング」制度を導入し、環境負荷の低減効果について、将来的な炭素コストも加味して、財務インパクトを定量的に評価し、意思決定できるようにしました。
このような協働を求めています
当社は環境資源を大切にし、地球環境を守ることを経営理念に掲げ、「技術革新を通じたサステナブルな社会の実現」を重要なマテリアリティと位置づけています。当社が推進する「(工程集約→自動化→GX)by DX」を中核とするマシニング・トランスフォーメーション(MX)はお客様の生産性向上と経営資源の最適化に貢献します。現在、全世界では約500万台の機械が稼働しています。今後、MXなどの技術革新によって、2050年頃には約100万台の最新機へ入れ替わると想定しています。この過程で廃棄される工作機械について、当社は世界最大の工作機械メーカーとして、これらの機械を適切に管理し、工作機械の製品ライフサイクルの各段階での資源を有効活用することを基本方針として、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取組を行っています。