2023年7月6日、「気候変動イニシアティブ(JCI)」は、設立5周年を迎えました。
振り返ると、JCIの立ち上がりは、日本の非国家主体(Non-State Actors: NSAs)にどのように受け入れられるか、些か不安の中でした。しかし、当初から期待を上回る数のメンバーが参加しただけでなく、その後も今日に至るまで、途切れることなく、仲間は増え続けています。メンバー数が増えるだけではありません。JCI主催の各種イベントにはメンバーはもとより、外部からの参加も大いに盛り上がり、更には、今や恒例となりつつある有志メンバーによる日本政府へのメッセージ発信など、政府とNSAsが互いに背中を押し合いながらより高みを目指す、いわゆる”Ambition Loop”の礎を築くことが出来ました。
こうした5年間の活動を通じ、JCIはこれまでの日本の気候変動対応では見られなかったNSAsによる新領域を切り開き、最早、国内では欠かせぬ存在となったと自負しています。
以下、これまでの活動報告と今後の展望などをご報告します。
■5年間の主な活動の軌跡(各年の活動成果は過去の周年報告から)
メンバー数は設立時から7倍以上に成長 | COP等の国際会議に参加し、現地で日本の取り組みを発信 | |
年次開催の気候変動アクションサミットにはのべ約6,600人が参加、133人が登壇 | メンバー団体による7つのメッセージ発信や政府との対話(過去の声明) |
■1年間の活動の成果
1. この1年で77団体が新たに参加、779団体に
2018年7月6日に105団体でスタートしたJCIは、一年間に新たに77団体が参加し、合計779団体(企業595、自治体38、その他146)となりました。 新規参加団体は、東証プライム市場上場企業53社を含む72社の企業、一つの自治体、4つのその他の団体です。
全JCIメンバー企業においてはRE100、SBTに取り組む企業もさらに増加しています。RE100に参加する日本企業総数80社のうち58社*がJCIメンバーであり、SBT認定取得済もしくは2年以内のSBT設定を表明済みの日本企業総数572社のうち160社がJCIメンバーです。また、Race to Zeroに日本から参加する183団体のうち77団体がJCIメンバーです。
*外資企業を含む67社から日本企業58社に訂正しました。(2024/7/9)
▶2022/7/6~2023/6/30 新規参加メンバー77団体(50音順)
▶メンバー団体一覧
2. G7日本開催にあたってのJCIから世界へのメッセージ公表
G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合に先立ち、2023年4月12日、「再生可能エネルギーとカーボンプライシングで二つの危機を打開する」と題したJCIメッセージを公表しました。JCIメンバー303団体(企業225、自治体16、団体・NGO等62)の賛同を得た本メッセージは、日本政府に対し、G7が昨年のサミットで合意した「2035年までに電力供給の全て、あるいは大部分を脱炭素化する」目標を実現するため、再生可能エネルギーの導入加速に向けた実効性のある施策の導入、規制改革の実施を求めています。気候危機とエネルギー危機が同時に進む中、日本企業、自治体、団体が共に、個々の団体名を明らかにして、実行性のあるカーボンプライシングの早期導入を含む気候変動対策の強化を求めるのはこのメッセージが初めてです。広範な企業、自治体、団体が名を連ねた今回のメッセージは、日本の非政府アクターが、二つの危機の克服をめざし、みずから先駆的に排出削減に取り組む決意と、それを支える政策の強化を求める強い意志を集結させたものです。同日、本メッセージ公表について札幌市内で記者会見を行い、国内外の数多くのメディアでも取り上げられました。
3. 日本政府への働きかけ
上記の公表に合わせ、2023年4月12日、共同代表からの書簡を内閣総理大臣、外務大臣、経産大臣、環境大臣あてに、JCIメッセージとともに送付しました。また、外務省、内閣府、環境省を訪問し、今回のJCIメッセージの意義や問題意識を改めて伝え、JCI事務局より今後の対話や連携の継続を申し入れました。
4. 日本の非政府アクターの取組みの強化: イベントの開催
気候危機の克服に向けた世界の動き、日本の企業・自治体の先駆的な経験を共有し、非政府アクターの取組みを高める場として、下記のイベントを企画・開催しました。
◇JCI連続ウェビナー 第3回「石炭火力発電フェーズアウトへの挑戦:日英の政策から考える」(2022年7月8日)
◇JCIウェビナー:Race to Zero参加要件改訂(2022年8月25日)
◇JCIメンバー限定交流ワークショップ「JCIメンバーと探す課題解決のヒント」(オンライン開催)(2022年9月1日)
◇気候変動アクション日本サミット2022(ハイブリッド開催)(2022年10月14日)
◇イベント@COP27ジャパンパビリオン(ハイブリッド開催)(2022年11月14日)
◇JCIウェビナー:G7・GX基本方針(2023年2月10日)
◇TPT共催シンポジウム トランジション・プラン(対面開催)(2023年3月28日)
■今後の予定
IPCC第6次評価報告書統合報告書が示したように、世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えるためには、2035年までに世界のCO2を65%削減する必要があります。その実現には、日本政府もまた目標を引き上げ、2030年に向けた削減対策も強化し、削減を加速していかなければなりません。
そのために、JCIは、日本の気候変動対策への機運を高め、あらゆる主体の具体的な行動を加速させ、日本の削減目標や気候変動政策を世界が目指す1.5℃目標に整合するものへと変えていくための活動を展開していきます。
1. 気候変動アクション日本サミット2023を開催(2023年10月6日)
日本国内の脱炭素化に向けたさらなる機運向上を目指し、本年10月6日(金)に「気候変動アクション日本サミット2023(JCAS2023)」を会場+オンラインで開催します。詳細は別途、公表します。
また、JCAS2023開催に向けて、下記のとおりウェビナーの連続開催を予定しています。
第1回「科学を知る:IPCC第6次評価報告書 統合報告書のポイントと目標・移行計画策定の最新動向」(7月13日 参加者募集中)
第2回「現状を知る:日本のGX政策の現状と課題」(8月)
第3回「声を上げる:Race To Zero 5th P: Persuade」(9月)
2. COP28への参加(2023年11月~12月)
本年11月30日〜12月12日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにおいて開催されるCOP28にJCIも参加します。
3. 国際潮流をとらえたアドボカシー活動
9月のUN Climate Ambition Summit、G20、11月〜12月のCOP28等の重要なイベントを契機に、グローバルの動向・要求を把握しながら、日本の政策の実効性を高めるため、JCIメンバーとともに政策提言や政府との対話を積極的に進めてまいります。
■JCI共同代表 末吉竹二郎・加藤茂夫からのコメント
IPCC第6次統合報告書や世界気象機関等の警鐘を待つまでもなく、気候変動の悪化は留まるところを知りません。既に、危険水域に入ってしまったのではとの危機感は世界では一層募るばかりです。そうした中で、2050年ネットゼロを目指す取り組みは、気候危機から地球を救うという表の顔に加え、国や地域、産業や企業、更には、個人や社会にとっては21世紀への生き残りをかけたサバイバルゲームの様相が強まっています。
こうした社会転換をGX(Green Transformation)と呼ぶ日本政府は、GX推進法を成立させました。150兆円を超える官民合わせての投資の大きさにはその意気込みを感じますが、肝心の中身はグローバルで求められるレベル・スピードには沿っておらず、すでに起きている気候危機と熾烈化したGX競争にはとても間に合いません。とすれば、日本のGX政策が抱える課題に声を上げ、そのギャップを埋める主役は、日本のNSAs、就中、JCIではないでしょうか。
思い返してください。JCIが創立時に掲げたのは「パリ協定が求める脱炭素社会の実現に向け、世界と共に挑戦の最前線に立つ」決意でした。気候危機との戦いはこれからの5~10年が勝負の時です。この決意を胸に日本、世界、そして、将来世代のために、汗を流していこうではありませんか。
■2022/7/6~2023/6/30 新規参加メンバー77団体(50音順)
〇企業
アース製薬株式会社 | シャープ株式会社 |
株式会社 アイスタイル | ジャパンリアルエステイトアセットマネジメント株式会社 |
朝日放送グループホールディングス株式会社 | 株式会社 ジャムコ |
株式会社 アドライト | 上新電機株式会社 |
荒川化学工業株式会社 | 新日本空調株式会社 |
E・Jホールディングス株式会社 | 株式会社 精好堂 |
飯田グループホールディングス株式会社 | セイコーグループ株式会社 |
伊藤忠商事株式会社 | ダイダン株式会社 |
伊藤ハム米久ホールディングス株式会社 | チタン工業株式会社 |
岩崎通信機株式会社 | 中部鋼鈑株式会社 |
株式会社 インソース | 株式会社 T&Dホールディングス |
株式会社 ウェイバック | テスホールディングス株式会社 |
株式会社 AHC | 東亜建設工業株式会社 |
NOK株式会社 | 東京応化工業株式会社 |
株式会社 エネルギーソリューションジャパン | 東洋インキSCホールディングス株式会社 |
荏原実業株式会社 | トーヨーカネツ株式会社 |
株式会社 エンビプロ・ホールディングス | トピー工業株式会社 |
王子ホールディングス株式会社 | 日東工業株式会社 |
株式会社 オークネット | 日東紡績株式会社 |
大倉工業株式会社 | 日本新薬株式会社 |
大崎電気工業株式会社 | 日本ゼルス株式会社 |
株式会社 オープンハウスグループ | ネクストレベルジャパン株式会社 |
オリックス・アセットマネジメント株式会社 | ノーリツ鋼機株式会社 |
株式会社 カインズ | ヒューリック株式会社 |
株式会社 樹昇 | 株式会社 ファインデックス |
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 | 株式会社 フォーバル |
サカタインクス株式会社 | マネックスグループ株式会社 |
株式会社 SUMCO | 三菱地所投資顧問株式会社 |
株式会社 山陰合同銀行 | 三菱自動車工業株式会社 |
三機工業株式会社 | ミネベアミツミ株式会社 |
株式会社 三陽商会 | 株式会社 都田建設 |
三和ホールディングス株式会社 | 森ビル株式会社 |
株式会社 シーアールイー | 株式会社 MORESCO |
株式会社 JTBコミュニケーションデザイン | 株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS |
株式会社 シェノン | りそなアセットマネジメント株式会社 |
しずおか焼津信用金庫 | 株式会社 りそなホールディングス |
〇自治体
豊島区
〇NGO、その他
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
ゼロエミッションを実現する会
特定非営利活動法人 農都会議
一般社団法人 日本風力発電協会