2024年11月11日から、会期を2日延長して11月24日まで、アゼルバイジャン共和国・バクーにてCOP29(気候変動枠組条約第29回締約国会議)が行われました。

2025年以降の新しい気候資金目標の合意が大きな争点となった今回、難航した交渉の結果、先進国政府の主導により、官民合わせて2035年までに年間3000億ドルを拠出することが決定しました。しかし、この金額は途上国政府にとって納得のいくものとはなりませんでした。

また昨年のグローバル・ストックテイクでは、化石燃料からの脱却、再生可能エネルギー3倍、エネルギー効率改善率2倍といった重要な事項が合意されました。今回、これらの実施に関する、いわゆる緩和策の合意がなされる予定でしたが、途上国の不満が残る気候資金目標の影響もあり採択にはいたらず、来年COP30へ先送りされることとなってしまいました。

一方、長年続いてたパリ協定6条、カーボンマーケットの交渉には進展があり、ついにその方法論や仕組みを定めるルールが最終合意されました。これにより、パリ協定6条に基づくカーボンマーケットが動き始めることとなります。

2025年2月までに各国が提出することとなっている2035年削減目標を含む次期NDC(国が決定する貢献:Nationally Determined Contribution)を野心高いものにするための機運づくりも、今回の注目点のひとつでした。COP29期間中、世界中から集まった非政府アクターが揺るぎない気候行動へのコミットメントを発信し、交渉にポジティブな影響を与えようと活動を繰り広げていました。

気候変動イニシアティブ(JCI)からも多くのメンバーが現地に赴き、イベント開催・登壇や国内外のステークホルダーとの対話などを通じて、日本の非政府アクターの取り組みを共有するとともに、世界の仲間とつながり、学びを深めました。


目次

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1.イベント開催・登壇
11月13日(水):Race To Zero / We Don’t Have Time共催セッション
「誓約から進捗への前進」
11月14日(木):EFChina, TARA主催イベント
再生可能エネルギー3倍を加速する」
11月15日(金):台湾環境省、台湾気候同盟ほか主催イベント
「ネットゼロ達成の新たな章に向けたグリーンアクション」
11月16日(土):ACA主催イベント
1. 基礎から:協調的なマルチレベルの行動とデータ主導の政策を通じて気候変動対策をリードする
2. 変化のために団結: アルゼンチン、チリ、日本、アラブ首長国連邦、米国、ベトナムにおける社会全体の視点からの共同的アドボカシー
11月21日(木):JCI主催セミナー
「1.5℃目標への道筋:脱炭素に挑む日本の非政府アクターたち」

2. ステークホルダーとの意見交換
■11/ 15 ACA ラーニングセッション
■11/ 16 Race To Zero、CDP
■11/18 SBTi

3. 報告書への掲載
■ネットゼロ宣言のあり方提言書の進捗報告書にJCIの政策アドボカシーが好事例として掲載
■ACAが発表した6か国の非政府アクターイニシアティブによる気候政策アドボカシー事例集にJCIのカーボンプライシング提言の事例が掲載


1.イベント開催・登壇

■11月13日(水):Race To Zero / We Don’t Have Time共催セッション「誓約から進捗への前進」
世界最大の非政府アクター連合として、Race to Zeroがいかに社会全体のネットゼロリーダーを動員し続け、野心的な目標を設定するだけでなく、誓約から計画、そして最終的には排出量削減へと移行を促しているのかを知るセッションに、山西高志 富士通株式会社 EVP CSSOが登壇しました。

◇日時:2024年11月12日(水) 17:30-18:00 現地時間 (同日22:30-23:00 日本時間)
◇会場:COP29 Climate Hub
◇言語:英語
◇登壇者:
山西 高志 富士通株式会社 EVP CSSO
Jane Eisenhardt, Engagement & Acceleration Manager, Race to Zero
Camila Fernandez, Expert Peer Review Group Manager, Race to Zero, Climate Champions Team
Takeshi Kuramochi, Senior Climate Policy Researcher, NewClimate Institute
Perla Martínez, Urban Climate Action Manager, Tecnológico de Monterrey

■11月14日(木):EFChina, TARA主催イベント「再生可能エネルギー3倍を加速する」

このイベントでは、アジア諸国における再生可能エネルギー開発の最近の成功事例やベストプラクティスについて議論し、世界目標と地域の移行経路に貢献するための協力の機会について議論しました。

◇日時:2024年11月14日(木) 17:30-18:30 現地時間 (同日22:30-23:30 PM 日本時間)
◇会場:COP29ブルーゾーン内 Regional Climate Foundations (RCF) パビリオン
◇言語:英語
◇登壇者:
平神 友美 自然エネルギー財団/気候変動イニシアティブ(JCI)
Kairos Dela Cruz (Executive Director, Institute for Climate and Sustainable Cities) Philippine: Generating political ambition for rapid RE deployment
Khalid Waleed (Research Fellow, Sustainable Development Policy Institute) Pakistan: Rapid deployment of off-the-meter solar
Zou Ji (President and CEO, Energy Foundation China) China: Enhance Power Supply Security and Renewable Share in the Grid by Increasing Flexibility Resources- Suzhou Case

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■11月15日(金):台湾環境省、台湾気候同盟ほか主催イベント「ネットゼロ達成の新たな章に向けたグリーンアクション」

2025年には、パリ協定の達成に向けて、各国はより先進的で野心的なNDCを設定する必要があります。各国政府が気候問題に総合的に取り組むことに加え、地方自治体や民間団体が全国的な気候対策を動員して、ネットゼロへの移行を加速し、2030年の中間目標達成を推進し、ネットゼロを実現するにはどうすればよいか、加藤茂夫JCI共同代表を含む3人のスピーカーが経験を共有しました。

◇日時:2024年11月15日(金) 11:20-12:05 現地時間 (同日16:20-17:05 PM 日本時間)
◇会場:オンライン
◇登壇者:
加藤 茂夫 気候変動イニシアティブ共同代表
アクセル・ミカエロワ パースペクティブズ気候グループ研究ディレクター
彭双朗 台湾気候同盟理事長

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■11月16日(土):ACA主催イベント

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1. 基礎から:協調的なマルチレベルの行動とデータ主導の政策を通じて気候変動対策をリードする

科学的分析と多様な地域の声による共同的なアドボカシー活動を組み合わせることで、いかに影響力のある気候変動政策を形作り、実施することができるのかを議論しました。また、アルゼンチン、チリ、日本、UAE、米国、ベトナムのケーススタディを特集した報告書「共同的なアドボカシー活動への社会全体のアプローチ:ACAからの証明」も発表し、団結した取り組みが野心的な気候変動対策につながる実際の例を紹介しました。

◇日時:2024年11月16日(土)16:00-17:00 現地時間(同日 21:00-22:00 日本時間)
◇会場:COP29ブルーゾーン内 WWFパビリオン
◇言語:英語
◇登壇者
Manuel Pulgar Vidal, WWF Climate & Energy Global Practice Leader
Ramiro Fernández, Campaigns Director, UN High Level Champions of Climate Action for COP29
Urszula Kasperek, Head, CHAMP National Engagement, C40 x GCoM Joint Program
Ryna Cui, Associate Research Professor and Acting Director, Center for Global Sustainability, University of Maryland

2. 変化のために団結: アルゼンチン、チリ、日本、アラブ首長国連邦、米国、ベトナムにおける社会全体の視点からの共同的アドボカシー

ACAのメンバーであるアルゼンチン、チリ、日本、アラブ首長国連邦、米国、ベトナムの非政府アクター連合の 6 つの事例をを取り上げ、地方政府、市民社会、企業が団結していかに政府の脱炭素化戦略に影響を与えることができるのかを紹介しました。JCIからは加藤茂夫共同代表が登壇し、JCIのアドボカシー活動の事例を世界に向けて共有しました。

◇日時:2024年11月16日(土)17:30-18:30 現地時間(同日 22:30-23:30 日本時間)
◇会場:COP29ブルーゾーン内 WWFパビリオン
◇言語:英語
◇登壇者:
加藤 茂夫 気候変動イニシアティブ共同代表
Pilar Bueno Rubial, Undersecretary of Climate Change and Just Ecological Transition of Rosario, Argentina
Claudio Castro Salas, Mayor of the city of Renca, Chile
Hợp Vũ Thị Bích, Executive Director Center for Sustainable Rural Development (SRD), Viet Nam.
Frankie McDermott, Chief Operating Officer, Sacramento Municipal Utility District

■11月21日(木):JCI主催セミナー「1.5℃目標への道筋:脱炭素に挑む日本の非政府アクターたち」

COP29ジャパン・パビリオンウェブサイトはこちら

世界が1.5℃目標を達成するためには、企業や自治体、大学、若者団体などの「非政府アクター」が、実行可能なあらゆる気候行動を加速させていくことが不可欠です。また、自然と共生する持続可能な社会を同時に実現するためには、社会全体が連携して取り組まなければなりません。
本セミナーでは、気候変動対策に積極的に取り組む非政府アクターの連合体「気候変動イニシアティブ(JCI)」に参加するメンバー団体が登壇。各セクターの視点から、日本、そしてグローバルに進める各団体の最新の取り組みと今後の意気込みを発信しました。
また、気候変動対策だけでなく生物多様性の保全等、非政府アクターに求められる取組の幅が広がり深化する中、世界の脱炭素に貢献するために日本の非政府アクターはどう行動を強化していくべきか?国際団体からのゲストを交えながら、メンバー団体が議論しました。

◇日時:2024年11月21日(木)14:00-15:15 現地時間(同日 19:00-20:15 日本時間)
◇会場:COP29ジャパン・パビリオンセミナー会場
◇言語:英語
◇プログラム(敬称略)
1.開会あいさつ
加藤 茂夫 気候変動イニシアティブ共同代表

2.パネルセッション
スピーカー(50音順):
大類 雄司 株式会社格付投資情報センター 執行役員 サステナブルファイナンス特命担当
岸本 道弘 株式会社日立製作所 環境戦略企画本部 理事 環境戦略ダイレクター
河野 晃 日本郵船株式会社 代表取締役 副社長執行役員 CFO
プリティ スリバァスタブ アサヒグループホールディングス株式会社 グループサステナビリティヘッド
カミラ フェルナンデス レース・トゥ・ゼロ 地域エンゲージメント、EPRGマネージャー
モデレーター:榎堀 都 CDP Worldwide-Japan アソシエイト・ディレクター

3.閉会あいさつ
トビー・ウォーカー クライメートグループ 国際アドボカシー シニアマネージャー

 


2. ステークホルダーとの意見交換

■11/15 ACA
ACAに参加する各国イニシアティブが集まり、各国の経験・知見を共有し学びあうセッションが複数回開催されました。11/15に行われたセッションはJCIがこれまでに実施してきた政策アドボカシーの活動から得た知見を他国に共有。参加者からは高い関心を受け、活発な議論が交わされました。

■11/16 Race To Zero、CDP
国連キャンペーンRace To Zeroのキャンペーンディレクター ラミロ・フェルナンデス氏、エンゲージメントリードのジェーン・アイゼンハート氏を迎え、非政府アクター、特に世界の企業におけるネットゼロ行動の動向や課題などについて、JCIに参加する企業やユースメンバーと意見交換を行いました。

また同日、CDP チーフインパクトオフィサーのニコレット・バートレット氏との意見交換会も開催し、CDPが所有するデータ活用の今後の展望などについての情報提供を受けました。

■11/18 SBTi
SBTi チーフインパクトオフィサーのトレイシー・ワイマン氏と意見交換を行いました。ワイマン氏からは、現在進められているScope3ガイダンス策定の進捗、今後の予定などが共有されたほか、来年1月から開始予定の公開コンサルテーションへの日本企業からの積極的な意見提出に期待が寄せられました。参加者からも積極的に質問が出され、活発に議論が行われました。


3. 報告書への掲載

国連や関係機関、他国の非政府アクター連合などとの積極的な関係構築が、こうしたJCIの活動の国際発信の機会につながっています。

■ネットゼロ宣言のあり方提言書の進捗報告書にJCIの政策アドボカシーが好事例として掲載
レポートはこちらから
■ACAが発表した6か国の非政府アクターイニシアティブによる気候政策アドボカシー事例集にJCIのカーボンプライシング提言の事例が掲載
レポートはこちらから


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