登壇者プロフィールと資料、当日の記錄映像はこちら

気候変動イニシアティブ(JCI)は、2022年10月14日(金)に、「気候変動アクション日本サミット2022(JCAS2022)」を開催しました。5回目となる今年は、3年ぶりに会場開催を復活し、またオンラインでも同時に視聴いただけるハイブリッド形式で実施しました。国内外のあらゆるセクターからご参加くださった約1700名の方々とともに、情報開示、建築物、交通・運輸などの分野で最先端を走るメンバー団体の事例報告を受けて、脱炭素社会の実現を加速化させる議論を深め、行動へとつなげる機運を醸成することができました。

開会のあいさつに立ったCDP Worldwide-Japanの森澤充世ディレクターは、再生可能エネルギーの導入拡大はエネルギー危機への対応だけでなく、気候危機の解決、経済や安全保障にとっても重要であると主張しました。気候変動による被害の拡大が企業活動をリスクにさらしていることを背景に、企業の気候変動に対する取り組みが投融資の判断を左右するようになっていると指摘。本サミットで紹介される自治体や企業の先進的な取り組みを参考に、課題解決のための議論をさらなる行動へとつなげてほしいと期待を表明しました。

 

次いで、東京都の小池百合子知事からのビデオメッセージが紹介され、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)理事の小森博司氏のごあいさつが続きました。

小池知事は、東京都が「2030 年カーボンハーフ」、「2050 年ゼロエミッション東京」の実現に向けて、電力を「Ⓗ減らす・Ⓣ創る・Ⓣ蓄める」の頭文字を取ったHTTをキーワードにした取り組みを紹介。都の70%以上を占める建築物からの排出量を削減するため、事業者に新築住宅への太陽光発電設置を義務づける全国初の制度について発表しました。

続いて登壇した小森氏は、国際財務報告基準(IFRS)財団の評議委員会が気候変動を最も差し迫ったサステナビリティの課題と特定したことを受けて、昨年のCOP26でISSBを設立した経緯を紹介。今年3月には草案を発表するなど、サステナビリティ情報開示の国際ルールの策定に向けた作業に全力で取り組んでいると報告。サステナビリティ情報開示の新しいルールを企業価値の向上につなげるよう提言しました。

 

特別講演には、東京海洋大学客員教授のさかなクンが登壇し、気候変動による海と海洋生物への影響について、得意のイラストを示しながら解説しました。気候変動と生物多様性に関連する幅広い啓発活動を行っているさかなクンは、サンマやアイナメなど冷水を好む魚の漁獲量が減少する一方、サワラやアイゴなど温水を好む魚の漁獲量が増加していると指摘。海水温の上昇が魚類の回遊ルートを変え、餌となる海藻類を減少させるなど、気候変動が海洋生態系を大きく変化させている現状を報告しました。

 

セッション1 脱炭素に向けた情報開示には、日本公認会計士協会、キリンホールディングス株式会社、SOMPOホールディングス株式会社、京都市が登壇。事業活動にともなう気候変動リスクと機会を把握し、その情報を開示する取り組みについて、何を目的に、どのフレームワークを使って情報開示をし、どんな成果が得られているか、それぞれの実績を紹介。国際的に情報開示の要請が高まるなかで、「開示のための開示」ではなく、企業価値の向上をめざして行動変容につなげる重要性について議論を深めました。

 

セッション2 建築物の脱炭素化では、積水ハウス株式会社、株式会社竹中工務店、ヒューリックプロパティソリューション株式会社、住友林業株式会社から登壇。産業界からの排出と並んで日本の排出量の33%を占める建築物からの排出量の削減に、建築、不動産、林業経営を通した貢献について発表しました。これを受けて、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及はもちろん、ZEHでは賃貸住宅のZEH化の増加、ZEBでは木造ビルの拡大などの事例を通して、建築物の脱炭素化への解決策が示唆されました。

 

セッション3 交通・運輸分野の脱炭素化では、海運・鉄道・地域交通・物流を代表して日本郵船株式会社、東急株式会社、小田原市、佐川急便株式会社がそれぞれの取り組みを紹介。日本の排出量の20%を占める交通・運輸分野からの排出削減のために、船舶や車両など交通手段の転換、充電ステーションなど交通インフラの整備、再エネの供給拡大などの課題解決が求められていることから、分野を横断する連携の必要性が確認されました。

 

トップリーダーズセッションは、企業、自治体のトップが脱炭素に向けた理念や戦略を語り、議論する場として毎年、注目されています。今年はモデレーターに国際法と気候変動政策研究の第一人者として知られる、東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授をお迎えしました。

企業のリーダーとして日本電気株式会社、大和ハウス・アセットマネジメント株式会社、自治体新電力を支援するパシフィックパワー株式会社、自治体のリーダーとして川崎市と、各分野の先頭を走るリーダーが登壇。それぞれの意欲的な取り組みが紹介されました。このセッションを通して、気候危機を脱炭素社会へと移行するチャンスととらえ、排出量をはじめとするデータインフラの整備、企業と自治体との連携、再生可能エネルギーの導入拡大などが提言されました。

 

最後の閉会あいさつにおいて、JCIの末吉竹二郎代表は、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機に際し、再エネの拡大を最優先の公益と位置づけて2035年までに電力の100%再エネ化をめざすドイツのエネルギー政策を紹介したうえで、日本も危機を変革のチャンスにすべきと主張。721にまで増加したメンバー団体に向け、「JCIよ、アンビシャスたれ!」と力強く呼びかけ、非政府アクターによる脱炭素の推進を加速させる決意を表明しました。

 

登壇者のプロフィールと資料、当日の記録映像は、下記のページからご覧いただけます。

動画・資料公開:10月14日開催「気候変動アクション日本サミット2022」


<過去の気候変動アクション日本サミット>

■「気候変動アクション日本サミット2021」2021年10月13日開催JCAS2021概要レポート
■「気候変動アクション日本サミット2020」2020年10月13日開催
■「気候変動アクション日本サミット2019」2019年10月31日開催
■「気候変動アクション日本サミット」2018年10月12日開催