登壇者プロフィールと資料、当日の記録映像はこちら

 

気候変動イニシアティブ(JCI)は、2021年10月13日(水)、「気候変動アクション日本サミット2021(JCAS2021)」を開催しました。4回目となる今年も、昨年に引き続き、会場からライブ配信したプログラムをオンラインでご視聴いただきました。これによって、日本全国、そして海外の企業、自治体、大学などあらゆるセクターから2000名以上の方々にご参加いただき、脱炭素社会に向けた機運の醸成につなげることができました。

開会のあいさつに立った末吉竹二郎JCI代表は、2018年の発足時に105だったJCIのメンバー団体が、わずか3年で6倍を超える671に増加したことを紹介。気候危機を人類の生存に対する危機と位置づけ、2050年ネットゼロに向けて疾走する世界の後塵を拝した日本に後はない、今こそ遅れを取り戻す最後のチャンスだと主張しました。COP26 の議長国である英国のジョンソン首相が国連総会で「COP26は人類のターニングポイントになる」と述べたことを紹介し、この重要なターニングポイントにおいて、日本が世界と危機感を共有し、世界に伍していける国となるよう、JCIはメンバー団体とともに自らの取組みの強化だけでなく、日本政府にも強く働きかけていくと強い決意を表明しました。

次いで、海外の要人から、COP26に向けて取り組みの強化を求めるビデオメッセージが紹介されました。
メッセージをお寄せくださった3人は、国連気候変動担当特使、ブルームバーグ・フィランソロフィーおよびブルームバーグ社 創設者、第108代ニューヨーク市長のマイケル・R・ブルームバーグ氏、COP26アジア大洋州特使のケン・オフラハティ氏、国連ハイレベル気候チャンピオンのゴンザロ・ムニョス氏です。3氏はともに、非政府アクターが結集すれば脱炭素社会の実現できると断言したうえで、石炭火力の早期廃止、再生可能エネルギーへの転換、世界全体で脱炭素を達成するために不可欠な資金問題の解決を呼びかけました。

基調講演では、気象庁気象研究所研究総務官の石井雅男氏が登壇し、特別報告「日本も直面する気候危機」を行いました。IPCCの第6次評価報告書第1作業部会報告書の主要執筆者の一人でもある石井氏は、1.5度目標を実現するための残余炭素予算1,400億炭素tはおよそ10年でなくなると指摘。温暖化が引き起こす海洋への深刻な影響を中心に報告した後、「温室効果ガスの排出を即座に、迅速に、大量に減らさなければ、温暖化を+1.5℃に抑えることはできない。私たちが将来体験する気候は、私たちの今の決定によって変化する」と総括しました。

続いて、パネルディスカッション「気候変動アクション最前線2021」では、3つのセッションが行われました。

「セッション1 Race To Zero」では、Race To Zeroに参加する東京都、エコワークス株式会社、サントリーホールディングス株式会社、ニッセイアセットマネジメント株式会社から5名のスピーカーが登壇しました。2050年ネットゼロをめざすそれぞれの取り組みを通して、事業体が単体で目標を達成することは困難であり、バリューチェーン全体で取り組む必要があるという課題があるものの、この課題の解決が広く社会全体の脱炭素の動きを拡大し、加速していくことが確認されました。

「セッション2 気候危機への新たな挑戦」では、過去1年間に新たにJCIに参加し、SBTにコミットするなど取り組みを強化した塩野義製薬株式会社、株式会社大林組、日清食品ホールディングス株式会社、ANAホールディングス株式会社、株式会社かんぽ生命保険の多様な分野の企業から5名が登壇し、各社の取り組みを紹介。各社とも脱炭素をめざす理由に企業の社会的責任を挙げ、長期的な視野に立って、投資家から消費者までの広範なステークホルダーと連携する重要性が議論されました。

「セッション3 変革をめざすマルチセクター」では、宗教団体から創価学会、消費者団体から公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会、若者グループからYOUTH for ONE-EARTH、自治体から京都市という多様なセクターが参加。各セクターの特性を生かした活動によって気候変動への機運が社会全体で向上していることが報告されました。これを受けたセッションでは、各セクター内での機運の高まりをセクター間の連携につなげ、行動を拡大していく大きな可能性を感じる議論となりました。

最後を飾るトップリーダーセッションでは、国際航業株式会社、アセットマネジメントOne株式会社、東京製鐵株式会社、千葉商科大学と、それぞれの分野で先頭を走るリーダーが登壇。モデレーターを努めたキャスターの国谷裕子氏が、COP26を前に発表されたIPCCの「第6次評価報告書」とUNFCCCの「NDC統合報告書」の概要を紹介し、「1.5度目標を達成するためには、2030年までに2010年比で半減しなければならないのに、16%増になる」という現状を伝えた後、リーダーによる先進的な取り組みが紹介されました。このセッションで、日本には脱炭素を実現するポテンシャルがあることが示されるとともに、実現のためにはカーボンプライシングの導入や脱炭素社会の明確な未来像の構築など課題解決のための提言が話し合われました。

JCAS2021は、脱炭素化に向けて躍動する非政府アクターの実践を伝える4時間のプログラム全体を通して、気温上昇を1.5℃に抑える未来への希望を参加者のみなさまと共有し、幕を閉じました。

登壇者プロフィールと資料、当日の記録映像は、下記のページからご覧いただけます。
動画・資料公開:10月13日オンライン開催「気候変動アクション日本サミット2021」