6月26日、日本政府はパリ協定に基づく2050年に向けた気候変動対策の長期戦略を国連に提出しました。

気候変動イニシアティブ(以下、「JCI」)は、5月16日に144企業、26自治体、42団体(合計212メンバー)の賛同を得て、政府の長期戦略案に対するメッセージ「日本の脱炭素リーダーシップを世界に示す長期戦略を」を発表し、パブリックコメントとして政府に提出しました。

このメッセージでJCIは、パリ協定とIPCCの「1.5℃特別報告書」に沿った脱炭素社会の大胆なビジョンを示すことを日本に求めました。また、メッセージの中で「脱炭素社会の実現に最も重要なことは、エネルギー効率化を徹底して進め、再生可能エネルギーの利用を最大限に拡大すること」だと指摘し、「特に、日本においては、再生可能エネルギー目標の一層の引き上げが、石炭火力など化石燃料への依存を大幅に減らしていく上で鍵となる」と主張しました。分野を越えた非政府アクターが共に、国に対しこのようなメッセージを発表することは、初めてのことでした。

しかしながら、今回、政府が国連に提出した長期戦略は、再生可能エネルギーの目標引き上げを打ち出さず、先進諸国の半分という現在の低い政府目標を踏襲する内容になっています。一方、国際的な批判が集中している石炭火力については、継続的に利用を続ける方針を示しました。2050年の削減目標についても、従来からの80%削減の枠から出ず、脱炭素化を達成する明確な目標年次を示しませんでした。

この本気度に欠ける日本政府の長期戦略に対し、末吉竹二郎 JCI代表は、
「急速に悪化する温暖化の厳しい現実が1.5℃目標への引き上げを強く要求する中にあって、フランス、ドイツ、英国は2050年実質排出ゼロ目標で足並みを揃えるなど、並々ならぬ決意で臨んでいます。気候変動は、いまや気候危機(Climate Emergency)という非常事態になっているという声が高まっています。
長期戦略が示す日本政府の対応は危機感と切迫感に乏しく、多くが旧来からの政策の現状維持、またはその延長の域を抜け出していません。これからの10年が勝負の時と言われる中にあって、実現の時期が見通せない『非連続な技術イノベーション』に重きを置く戦略は、問題先送りの姿勢だとの誹りを免れません。

日本が、本当に世界の脱炭素化におけるリーダーシップをとろうとするのであれば、再生可能エネルギー目標を大幅に引き上げ、石炭火力の段階的な廃止のタイムラインを明示し、2050年までの脱炭素化達成を明確に掲げるべきです。国の気候変動戦略やそれに伴う政策は、企業や自治体、市民団体などの非政府アクターが取り組んでいる炭素排出を減らすための先駆的な取組みを認識し、それらの取組みが一層進むよう後押しするものでなければなりません。そうすることで、世界に伍して、私たちは共に日本の脱炭素化を築くことができるのです。
こうした姿勢を鮮明に打ち出すことで、日本はG20の議長国に相応しい信頼ある立場を築くことができます。20年に一度の日本でのG20が時の経過の中で風化するのか、それとも、気候変動との戦いに勝利するための転換点として歴史にその名を残すのか、日本はいまその分かれ道に立っています」
と、述べています。

日本がホストするG20大阪サミットは、6月28日、29日に開催されます。
日本政府が、すでに国を上回る気候変動対策に踏み出している多くの非政府アクターの声を真摯に受け止め、ホスト国としてふさわしい、脱炭素化に向けた真のリーダーシップを世界に示すことを強く求めます。そして、2050年までに日本に脱炭素化をもたらすため、非政府アクターと共に取り組むことを期待しています。

 

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