本日、政府は、2030年までの温室効果ガスの削減目標 を含む国別目標(Nationally Determined Contributions, NDC) を、一切の引き上げを行わないまま国連に再提出することを決定しました。

気候変動イニシアティブに参加する248団体(159企業、25自治体、64その他団体)は、本年2月、温室効果ガス排出削減量改定を含んだ国別目標の強化を行い、国連に提出することを国に求めるメッセージを公表しました。このメッセージは、日本を代表する大手企業、地方経済を支える中小企業、全国の地方自治体、環境NGO・NPO、更には消費者団体、宗教団体など数多くの非政府アクターが署名したものであり、2030年までの削減目標の強化を求める声の広がりの大きさを示したものです。

政府は、こうした声にいっさい耳を傾けず、国の省庁の中だけの閉ざされた議論で、再提出を決定しました。政府は、次回のパリ協定上の5年の提出期限を待つことなく、次の削減目標を検討するとしていますが、気温上昇を1.5℃以下に抑え、気候危機の深刻化に歯止めをかけるためには、2030年までの削減目標を早急に大幅に引き上げ、その達成に向けた対策強化を開始しなければばらないのです。

気候変動イニシアティブは2月のメッセージの中で、「日本が現状の目標を据え置きにすれば、日本の消極姿勢を対外的に表明することになるばかりでなく、困難な中でも削減目標・対策の強化を模索している他の国々の努力に水を差す」ことになると指摘しました。

いま人類は新型コロナウイルスの脅威に直面し、その克服にむけた戦いが世界各地で進められています。この戦いの中で、日々、明らかになってきている教訓は、地球規模の危機は、各国が一丸となり協調して取り組まなければ解決できないということです。

この教訓は気候危機への戦いにいっそう強くあてはまります。「自国のエネルギー基本計画の見直しができないから、現時点では温室効果ガス削減目標を引き上げられない」などという理屈は、世界に到底通用するものではありません。2015年にパリ協定が成立した時から、本年のCOP26までにNDCの強化を行うことが各国共通の課題だったのです。

このままCOP26を迎えれば、「脱炭素化に後ろ向きな日本」という評価が定着し、日本企業の世界的なビジネス展開への障害となり、中小企業も含めサプライチェーンからの除外という事態も招きかねません。そして何よりも、自分たちと未来の世代のために、声をあげる日本と世界の若者たちの願いを裏切ることになります。

政府には、「地球温暖化対策計画の見直しに着手」と言うだけではなく、削減目標を引き上げる具体的な時期とプロセスを早急に明らかにし、気候危機に挑む世界の最前線に参加する日本の明確な意思をCOP26の前までに世界に示すことを強く求めます。

 

PDF: 日本政府のNDC提出に対する末吉竹二郎JCI代表のコメント -削減目標の早急な引き上げを-

 

<参考>

環境省報道発表資料:「日本のNDC(国が決定する貢献)」の地球温暖化対策推進本部決定について

JCI記事:JCIによるNDC強化を求めるメッセージ(2020年2月4日)(賛同団体一覧あり)