気候変動イニシアティブ運営委員会*は、新型コロナウイルス感染拡大が引き起こしている世界、日本での深刻かつ様々な影響を踏まえ、これから活発化する経済回復に向けた経済対策のあり方について、「脱炭素社会への転換」という観点から以下のとおりメッセージを発表しました。

 

プレスリリース: コロナ危機を克服し、気候危機に挑む「緑の回復」へ


コロナ危機を克服し、気候危機に挑む「緑の回復」へ

新型コロナウイルス感染の拡大は既に多くの人命を奪い、世界と日本の経済、企業の経営、雇用、更には社会生活に深刻な影響を与えています。いま最も重要なのは、国や自治体はもちろん、企業をはじめとする非政府アクターも、あらゆる対策を徹底し、一刻も早く感染拡大を収束させることであることは言うまでもありません。
こうした緊急の取組みを優先させつつ、忘れてならないのは人類の直面するもう一つの危機、気候危機の克服に向けた取組みの継続であり強化です。
感染拡大が引き起こす経済活動の停滞は、直近のエネルギー消費を抑制し、二酸化炭素排出量を減少させると予測されています。しかし、気候危機の克服に必要なのは、経済活動の縮小による短期的な排出削減ではなく、脱炭素型の社会・経済システムへの転換による、成長と両立する継続的で大幅な排出削減です。
気候危機への取組みが遅れれば、台風、熱波、干ばつ、洪水など人命を脅かす自然災害が制御不可能なものとなってしまいます。さらに、気候変動はマラリアやデング熱などの感染症拡大をもたらすと予測されており、今まさに世界が経験しているような甚大な影響を再び引き起こす恐れもあります。
世界でも日本でも、コロナ危機後の経済対策についての議論が始まっています。気候変動対策を先導してきた欧州では、各国政府のみならず、多様な企業のグループから、経済回復に向けた投資を気候変動対策に貢献するものとする「緑の回復」が提言されています。
日本でも、コロナ危機からの回復を脱炭素社会への転換に向けた取組みと整合したものにする必要があります。気候変動イニシアティブに参加する多くの企業、自治体はRE100に代表される自然エネルギー電力の拡大、カーボンニュートラルへの宣言などの取組みを先導的に進めてきました。感染拡大防止のため、エネルギー効率化としても重要なテレワークが急速に広がるという積極的な動きもあります。
私たちは、自らが脱炭素化に向けた取組みを継続・強化することを表明するとともに、国に対し、コロナ危機からの回復を化石燃料への依存を固定化するものではなく、脱炭素社会への転換に貢献する「緑の回復」とすることを求めます。

2020年5月13日
気候変動イニシアティブ運営委員会


*気候変動イニシアティブ運営委員会:
一般社団法人 イクレイ日本、 一般社団法人 エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク、 一般社団法人 CDP Worldwide-Japan、 公益財団法人 自然エネルギー財団、 公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWF ジャパン)、 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan-CLP)、 フロンティア・ネットワーク(TFN)