気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)は、「石炭火力」をテーマに、下記のとおりウェビナーを開催いたしました。
日本は、CO2排出量の大きい石炭火力発電について、国内での新増設を進めるとともに、東南アジアなどの海外への輸出を支援し続けており、国際的にも大きな批判が寄せられてきました。
7月3日、梶山経済産業大臣は、国内の「非効率な石炭火力発電を2030年までにフェードアウトする」という方針を公表しました。しかしこれは、「高効率」と称する石炭火力を、2030年時点で30GW以上も温存するものだという批判が寄せられています。
また、石炭火力の輸出については、7月9日に政府が発表した新たなインフラ輸出戦略の中で、「支援しないことを原則とする」と定められました。しかし、支援の要件は厳格化された一方で、進行中プロジェクトの支援は継続されるとともに、いまだ新規の輸出を可能とする含みは残されています。
今回のウェビナーでは、日本における石炭火力の動向に関する有識者をお招きし、国内および国外の二つの面から情報提供とディスカッションを行いました。
約600名もの方にご参加いただき、質疑応答でもたくさんのご質問があり、日本の今後の気候変動対策の在り方を考える大変有意義な場となりました。
当日の資料PDFおよび映像は、下記プログラム内のリンクからご覧いただけます。
JCIウェビナー「石炭火力を考える」
日時:2020年7月28日(火) 10:30~12:00
開催方法:zoomウェビナー およびYouTubeライブ配信
プログラム
1. 開会あいさつ
末吉 竹二郎 気候変動イニシアティブ(JCI) 代表 / 国連環境計画・金融イニシアティブ 特別顧問
2. 講演1 「国内の石炭火力フェーズアウトの必要性」 資料PDF
平田 仁子 気候ネットワーク 国際ディレクター/ CAN Japan 代表
3. 講演2 「石炭火力輸出の中止と自然エネルギー支援への転換が必要な4つの理由」 資料PDF
滝澤 元 自然エネルギー財団 上級研究員
4. パネルディスカッション
高村 ゆかり 東京大学未来ビジョン研究センター 教授
平田 仁子 気候ネットワーク 国際ディレクター/ CAN Japan 代表
大野 輝之 自然エネルギー財団 常務理事
5. 質疑応答(※zoomのQ&A機能を利用)
司会:田中 健 WWFジャパン 気候・エネルギーグループ
↓当日のYouTube映像はこちら↓
登壇者プロフィール(登壇順)
末吉 竹二郎 気候変動イニシアティブ(JCI) 代表 / 国連環境計画・金融イニシアティブ 特別顧問
東京大学を卒業後、1967年に三菱銀行(現 三菱東京UFJ銀行)に入行。1998年まで勤務した。 日興アセットマネジメントに勤務中、UNEP金融イニシアチブの運営委員メンバーに任命された。現在、アジア太平洋地区の特別顧問としてUNEP金融イニシアチブの活動を支援する傍ら政府や地方自治体の審議会委員などを務める。 2018年9月には公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン 会長に就任。この他、セミナーや講演会、大学での授業などを通じて環境問題や社会的責任(CSR)、社会的責任 投資(SRI)についての講演等を行う。
主な著書に『ビジネスに役立つ!末吉竹二郎の地球温暖化講義』(東洋経済新聞社)、『有害連鎖』(幻冬舎)、『最新CSR事情』(北星堂書店)、『グリーン経済最前線』(岩波新書、共著)がある。
平田仁子 気候ネットワーク 国際ディレクター/理事・東京事務所
テーマ:国際交渉、気候・エネルギー政策、気候政治
出版社勤務後、1996年より米国環境NGO「Climate Institute」に所属。1998年団体設立当初より気候ネットワークに参加し、気候変動に関する国際交渉や国内外の気候変動・エネルギー政策の研究や分析、提言・情報発信などを行う。CAN-Japan代表も兼務。千葉商科大学サイエンスアカデミー特別客員准教授。著書に『原発も温暖化もない未来を創る』(編著、コモンズ、2012)、『新版 よくわかる地球温暖化問題』(共著、中央法規出版、2009)ほか。聖心女子大学卒、早稲田大学大学院社会科学研究科博士課程修了。博士(社会科学)。
滝澤 元 自然エネルギー財団 上級研究員
2019年より現職。専門は廃棄物発電および気候変動政策。環境省の外郭団体において東南アジアにおける廃棄物発電事業の実現可能性調査、独立行政法人国際協力機構において円借款事業の環境社会配慮審査を担当する。早稲田大学商学部卒、米国ブランダイズ大学ヘラースクール社会政策大学院修了。
自然エネルギー財団では、気候変動を担当、国内および海外における石炭火力発電の事業採算性に関する評価および財務リスク調査分析を行う。
高村 ゆかり 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授
島根県生まれ。専門は国際法学・環境法学。京都大学法学部卒業。一橋大学大学院法学研究科博士課程単位修得退学。静岡大学助教授、龍谷大学教授、名古屋大学大学院教授、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構教授などを経て現職。この間にフランス・パリ第二大学第三(大学院)課程及び国際高等問題研究所(1993〜1995 年)、ロンドン大学客員研究員(2000〜2001 年)。
国際環境条約に関わる法的問題、気候変動とエネルギーに関する法政策などを研究対象とする。日本学術会議会員、再生可能エネルギー固定価格買取制度調達価格等算定委員会委員・委員長代理、中央環境審議会委員、科学技術・学術審議会環境エネルギー科学技術委員会主査、社会資本整備審議会環境部会委員などを務める。官邸の下に設置されたパリ協定の長期低排出戦略を作成するパリ協定長期成長戦略懇談会、アジア開発銀行の気候変動と持続可能な発展に関する諮問グループの委員なども務める。2018 年度環境保全功労者環境大臣賞受賞。
大野 輝之 自然エネルギー財団 常務理事
2013年より現職。「長期低炭素ビジョン」など国の気候変動対策の策定に関わる検討会委員を務める。1979年 東京都入庁。都市計画局、政策報道室などを経て、1998年より環境行政に関わる。「ディーゼル車NO作戦」の企画立案、「温室効果ガスの総量削減と排出量取引制度」の導入など、国に先駆ける東京都の環境政策を牽引した。省エネルギーの推進と自然エネルギーの導入を図る数々の施策を産業界の合意を形成して実現、都のエネルギー政策の根幹を作る。2010年から3年間、環境局長を務める。東京大学非常勤講師。ソウル国際エネルギー諮問委員会委員。イクレイ日本顧問。公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン 理事。東京大学経済学部卒。
2014年、カリフォルニア州からハーゲンシュミット・クリーンエア賞を受賞。
著書に 『自治体のエネルギー戦略』、『都市開発を考える』(ともに岩波新書)、『現代アメリカ都市計画』(学芸出版社)など。