気候変動イニシアティブ(JCI)は、2020年10月13日(火)に、「気候変動アクション日本サミット2020(JCAS2020)」を開催しました。3回目となる今年は、新型コロナウイルス感染症対策として、会場からライブ配信したプログラムを、オンラインでご視聴いただくという初めての形式でした。結果的に、例年の2倍以上となる約1500名もの方が、日本全国そして海外からも視聴され、コロナ禍で浸透した「オンライン化」が、大きな成果につながることとなりました。

プログラムには、JCIメンバー団体をはじめ、国内外から多彩なスピーカーを迎え、3時間半にわたって行われました。

基調講演では、江守 正多氏(国立環境研究所 地球環境研究センター 副研究センター長)は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、今年度通して7%程度のCO2が減少したものの、単年の減少はCO2濃度や気温への影響はほとんどないと指摘。気温上昇1.5度に抑えるには、「グリーン・リカバリー」「ビルド・バック・ベター」と言われるように、再生可能エネルギーの拡大などを通じて継続的にCO2を削減していくことが必要であり、「脱炭素は待ったなし」と述べました。

それに続く講演で、末吉竹二郎JCI代表は、深まる気候危機の中で、「脱炭素化という地殻変動」が世界のビジネスのあり方を揺るがしている一方、日本ではその危機感が感じられないという懸念を示しました。「株主第一」から「社会第一」へとビジネスが大転換をはじめ、世界のリード企業や金融セクターが脱炭素化、ネットゼロに大きく舵を切る中、日本もネットゼロを掲げて国家の総力をあげなければこの脱炭素競争には勝てないと訴えるとともに、政府のNDCや再生可能エネルギー目標の引き上げを求めました。

また、海外から、3名の方がメッセージを寄せてくださいました。
ジョン・マートン英国COP26特使は、コロナ禍からの復興と気候危機への対応の両立の必要性を述べ、石炭からの脱却と再生可能エネルギーへの転換は、その復興にも経済成長にも重要であると訴えました。また、来年11月に英国で開催されるCOP26に向け、すべての国、指導者、企業に対し、気候危機に立ち向かう戦いへの参加を呼びかけました。

ブルームバーグ・フィランソロフィー、ブルームバーグ社 創設者/前ニューヨーク市長のマイケル・R・ブルームバーグ氏は、コロナウイルスのパンデミックは危機であると同時に、より強く持続可能なグローバル経済の立て直し、クリーンエネルギーによる新たな雇用の創出など、見逃すことのできない特別なチャンスをも提供してくれると述べました。また、日本のリーダーたちに向け、石炭火力からのエネルギーシフトを支持することを期待するとともに、JCIとこの課題に共に取り組むと述べられました。

COP26ハイレベル気候チャンピオンのナイジェル・トッピング氏は、ゼロ・カーボン経済は避けて通れないものであり、かつ社会やビジネスにとって喫緊の課題であると訴えました。そして、日本は今、気候変動政策において世界をリードしていないと指摘。また、日本は、この気候危機がもたらす避けられない変革において、勝つか負けるかの選択の岐路に立っているとも指摘。あらゆる日本の企業、投資家、都市、大学などあらゆるアクターに「Race to Zero(ゼロへのレース)」(2050年までにCO2排出をゼロにすることにコミットし、実現に向けた具体的行動を始める国連キャンペーン)に参加するよう呼びかけました。さらに、12月12日に気候変動対策をリードする世界各国のリーダーたちを集めて行われるパリ協定5周年記念の場において、菅首相が、2050年排出ゼロの目標を持って参加することへの期待を述べました。

 

 

来賓挨拶に来場された小泉進次郎環境大臣は、2050年の政府の温室効果ガス排出量の削減目標を80%からゼロカーボンへ引き上げたい、と力強く宣言しました。また、コロナ後の経済社会を新しく、より持続可能でレジリエントな形にリデザインができるよう、皆さんと共に頑張っていきたいと述べられました。

パネルディスカッション「気候変動アクション最前線2020」では、企業、投資家、自治体、ユース団体、中小企業団体から5名のスピーカーが登壇し、WWFジャパンの小西雅子専門ディレクターがモデレート。コロナ禍からの回復と脱炭素化社会の実現について、それぞれの活動の場からその取組みや思いを、率直な言葉で伺うことができました。
セッションを通して得られたメッセージは、コロナ禍で経験したピンチをチャンスととらえ、自身ができることと他と協働してできることに前向きに取組み、共に脱炭素化を進めていくことの重要性でした。

そして、最後のトップリーダーセッションでは、企業、自治体のリーダー5名が集結。国谷裕子キャスターがモデレートを務め、登壇したリーダーがそれぞれの分野、立場でどのようにコロナ禍においても脱炭素化を実現しようとしているのかや国への要望などを伺いました。
自治体、企業において2050年排出実質ゼロに向けた取組が加速する中、国が2050年排出実質ゼロにコミットし、2030年再生可能エネルギー目標を引き上げ、そしてその実現への道筋設定を明確にすることが、日本全体の非政府アクターのさらなる取り組みを後押しするという議論が交わされました。

 

 

プログラム、登壇者プロフィール、当日の記録映像と投影資料は下記ページからご覧になれます。
【資料公開】10月13日オンライン開催「気候変動アクション日本サミット2020」