JCIでは、2023年11月30日から12月13日まで、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにて開催されたCOP28(気候変動枠組条約第28回締約国会議)を振り返り、今後取るべきアクションについて考え、議論するウェビナーを開催しました。

今回のCOPではパリ協定開始後初めて、その進捗を評価する「グローバルストックテイク」が実施され、合意文書が全体会合で採択されました。

最大の焦点となっていた化石燃料について、難航した交渉の結果、欧米や島しょ国らが求めていた「化石燃料の段階的な廃止」については見送られたものの、「化石燃料からの脱却(Transitioning away)」という形で、初めて石油や天然ガスを含むすべての化石燃料に関する合意が採択されました。また、「2030年までに世界の再生可能エネルギー設備容量を3倍にする」という誓約に130か国以上が賛同し、合意文書の中にもこの目標が盛り込まれました。

今後は、COP28での合意文書が示すこれらのメッセージを、各国がいかに実践していくかが問われます。2024年、日本においては、エネルギー政策の基本的な方向性を示す第7次エネルギー基本計画の策定が予定されており、2035年削減目標を含む次期NDC(国が決定する貢献:Nationally Determined Contribution)の検討も行われるべき重要な年です。

本ウェビナーでは、COP28での交渉結果や今後日本に求められる政策、進むべき道筋について解説するとともに、現地に赴いた気候変動イニシアティブ(JCI)のメンバーが現地での活動や2025年に向けたアクション、政策について議論しました。


JCIウェビナー
COP28からの示唆:日本に今後求められる行動とは?

◇日時:2024年1月30日(火) 14:00-16:00
◇主催:気候変動イニシアティブ(JCI)
◇開催方法:オンライン(Zoom ウェビナー)
◇参加費無料・事前登録制

◇プログラム(敬称略)

1.開会あいさつ
末吉 竹二郎 気候変動イニシアティブ 共同代表

2.解説
(1) COP28の交渉結果と今後の日本への示唆 資料
山岸 尚之 WWFジャパン 自然保護室長

(2) 再エネ3倍の合意を受けて、2030年、2035年に向けて再エネを増やすために 資料
高瀬 香絵 自然エネルギー財団 シニアコーディネーター

(3) JCIカーボンプライシング提言の進捗 資料
加藤 茂夫 気候変動イニシアティブ 共同代表

3.パネルセッション|COP28参加JCIメンバーに聞く今後のアクション
登壇者(50音順):
佐座 マナ 一般社団法人SWiTCH 代表理事 資料
千葉 稔子 東京都環境局 気候変動対策部 気候変動対策専門課長
寺西 一浩 積水ハウス株式会社 環境推進部 環境マネジメント室 スペシャリスト
名取 由佳 一般社団法人Media is Hope 共同代表理事 資料
秀島 弘高 農林中央金庫 エグゼクティブ・アドバイザー/自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)メンバー
モデレーター:田中 健 WWFジャパン 気候・エネルギーグループオフィサー(非国家アクター連携担当)

4.議論・質疑応答

進行:原田 卓哉 CDP Worldwide Japan レポーターサービス シニアマネージャー


登壇者プロフィール(随時更新。プログラム順)

 

末吉 竹二郎 気候変動イニシアティブ共同代表

東京大学を卒業後、1967年に三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)に入行。1998年まで勤務した。 日興アセットマネジメントに勤務中、UNEP金融イニシアチブの運営委員メンバーに任命された。現在、アジア太平洋地区の特別顧問としてUNEP金融イニシアチブの活動を支援する傍ら政府や地方自治体の審議会委員などを務める。現在、公益財団法人 自然エネルギー財団 代表理事 副理事長、 公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン 会長。この他、セミナーや講演会、大学での授業などを通じて環境問題や社会的責任(CSR)、社会的責任 投資(SRI)についての講演等を行う。
主な著書に『ビジネスに役立つ!末吉竹二郎の地球温暖化講義』(東洋経済新聞社)、『有害連鎖』(幻冬舎)、『最新CSR事情』(北星堂書店)、『グリーン経済最前線』(岩波新書、共著)がある。

山岸 尚之 WWFジャパン 自然保護室長

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より室長。

高瀬 香絵  自然エネルギー財団 シニアコーディネーター

2023年より現職。慶應義塾大学総合政策学部(学士)、政策・メディア研究科(修士)修了後、日本エネルギー経済研究所にてエネルギー統計、長期エネルギー需給見通し、石油精製モデル、都道府県エネルギー需給モデル、世界エネルギーモデル等を担当。ノードハウス著「地球温暖化の経済学」等を訳し、DICEモデルを用いた分析を実施。地球環境産業技術研究機構 (RITE)を経て、テコンドー専念のため研究を中断し、韓国龍仁(ヨンイン)大学に留学。引退後、東京大学新領域創成科学研究科にて応用一般均衡モデルを用いた研究にて博士(環境学)を取得、科学技術振興機構低炭素社会戦略センターにて、シナリオ分析や「電気代そのまま払い」社会実装等を実施。2015年に国際NGO CDPジャパンに参画し、企業・金融機関の目標設定(SBT)、再エネ調達(RE100)、TCFD情報開示、低炭素移行計画等のエンゲージメントを実施。

加藤 茂夫 気候変動イニシアティブ 共同代表

株式会社リコーで欧州事業、本社統括に従事したのち、2015年からサステナビリティ担当役員として、脱炭素宣言、日本企業として初のRE100参画を実現。 事業活動とSDGsを同軸化するESG経営への変革をリード。その後、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)の共同代表、 World Environment Center(WEC、本部米国)やグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の理事として、気候変動問題を中心に企業・産業界の社会課題解決への貢献を牽引。外務省の「気候変動に関する有識者会合」のメンバーに加わる。2018年7月、気候変動イニシアティブ(JCI)設立に参画。

佐座 マナ 一般社団法人SWiTCH 代表理事

1995年生まれ。カナダ ブリティッシュ・コロンビア大学卒業。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン大学院 サステナブル・ディベロプメントコース卒業。Mock COP グローバルコーディネーターとして、140ヵ国の環境専門の若者をまとめ、COP26と各国首相に本格的な18の政策提言を行い、世界的な注目を浴びる。COP26日本ユース代表。2021年「一般社団法人SWiTCH」を設立。現在は2025年大阪・関西万博に向け、100万人のサステナブルアンバサダー育成プロジェクトを推進中。

 

千葉 稔子 東京都環境局 気候変動対策部 気候変動対策専門課長

2001年より東京都の環境行政、主に気候変動政策に携わる。大規模既存建築物を対象とした世界初の都市型CO2排出総量削減義務制度である「東京都キャップ&トレード制度」の政策立案・運営を担当。2014年から2017年まで持続可能な資源循環施策推進部門の経験を経て、2018年より再び気候変動政策を担当。2022年4月より現職。

寺西 一浩 積水ハウス株式会社 環境推進部 環境マネジメント室 スペシャリスト

2018年より現職。積水ハウスにおいて、事業活動の脱炭素化、サプライヤーにむけた脱炭素エンゲージメントを担当。TCFD情報開示やCDP関連業務に携わる。COP28においては、建築、建設セクターにおけるゼロエミッションを目指すグローバル プラットフォーム Global Alliance for Buildings and Construction (GlobalABC) の関連イベントなどに参加。

 

名取 由佳 一般社団法人Media is Hope 共同代表理事

1990年東京都出身。大学卒業後夢だったエンターテイメント企業に就職するも気候変動や社会課題に対する危機感が強まり退職。2019年より気候変動解決に向けた新たな価値の創出や社会システムの構築に向けて奮闘中。2021年にMedia is Hopeを任意団体として発足。2022年6月に法人化。現在はMedia is Hopeで主に対外的なコミュニケーション、ブランディング戦略を担当。

秀島 弘高 農林中央金庫 エグゼクティブ・アドバイザー/自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)メンバー

【経歴】
1989年4月~2021年3月 日本銀行勤務
2021年4月~ 農林中央金庫エグゼクティブ・アドバイザー(国際規制担当)
2022年11月~ TNFDタスクフォースメンバー

【主な業績等】
1989年日本銀行入行。2021年4月農林中央金庫入庫。日銀ではバーゼル銀行監督委員会関連事務に通算15年間従事。バーゼル銀行監督委員会事務局への出向(2002~2005年)、自己資本定義部会共同議長、マクロプルーデンス部会共同議長、同委員会メンバー等を歴任。

【著作】
「バーゼル委員会の舞台裏─国際的な金融規制はいかに作られるか」金融財政事情研究会(2021年5月)、日経ESGなどへの寄稿多数

田中 健 WWFジャパン 気候・エネルギーグループオフィサー(非国家アクター連携担当)

福岡県庁、経済産業省で廃棄物管理やリサイクル推進などの環境保全行政、日本のリサイクル企業の海外ビジネス展開支援に従事。その後、日本科学未来館にて科学コミュニケーターとして、国内外の科学館、企業、研究機関などと連携し、科学技術や研究者と一般市民をつなぐ様々なプロジェクトを担当。2018年8月から現職。気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)等、企業や自治体など非国家アクターの気候変動対策の強化に取り組む。九州大学理学府分子科学専攻にて修士課程(理学)修了。

 

原田 卓哉 CDP Worldwide Japan レポーターサービス シニアマネージャー

2020年7月にReporter Servicesの担当としてCDPに入職して以来、気候変動、フォレスト、水セキュリティをテーマにした質問書を通じて、日本企業の環境に関する情報開示及び取組改善を支援。また、CDPの各国オフィスの担当者と協働し、質問書の改訂作業に従事。2023年には、CDPサプライチェーンの業務にも参画し、サプライチェーンを通じた情報開示・取り組みを促進。2022年より環境省の再エネ電力メニュー審査等委員会の委員、2023年より経済産業省のカーボンクレジット検討会の委員を務める。サステナビリティ・マネジメント 修士課程修了


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