2024年5月24日更新:2023年12月5日に賛同団体一覧を公開後、新たに24団体より賛同があり、賛同数が210団体となりました。
賛同募集は終了しました。
2024年5月24日
【賛同210団体へ 5/24更新】気候変動イニシアティブ(JCI)メンバーによるカーボンプライシング提言
2030年GHG排出削減目標と国際競争力強化の同時達成に向けて
国際水準での排出削減を実現するカーボンプライシングとなるように現状案の改善を
気候変動イニシアティブ(JCI)は、本日、「気候変動イニシアティブ(JCI)メンバーによるカーボンプライシング提言:2030年GHG排出削減目標と国際競争力強化の同時達成に向けて」(別紙1)を公表しました。この提言には、186団体(企業140、自治体9、団体・NGO等37)が賛同し、名を連ねています(別紙2)。
2023年5月に成立したGX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)で、長年議論されてきたカーボンプライシングの導入に道筋がつけられました。しかし、世界で普及が進む炭素税・排出量取引制度と比較すると、同じ水準で排出削減を実現するには依然として不十分な点が多く残ります。
本提言は、2030年までに日本の温室効果ガス排出量半減を可能にするカーボンプライシングを日本で実現させ、国際競争力ある経済への道を開くことを目指すものです。そのために、現在の政府案を改善し、
・導入時期を2025年を目処に前倒しすること
・IEAの示す130ドル/t-CO2など2030年における十分な炭素価格を目指すこと
・企業の自主性任せでなく、対象部門の総排出量上限(キャップ)の設定と制度参加・排出削減の義務づけで世界と同等のキャップ&トレード型排出量取引制度に作り替えること
など今後の制度設計で満たされるべき6つの原則を提示しています。
東証プライム企業61社などの大企業、自治体、消費者・宗教団体、NGO等が幅広く賛同
パリ協定が掲げる1.5度目標を達成する上で重要な節目となる2030年が迫る中、企業、自治体、各団体など日本のマルチセクターが個別の団体名を明らかにしてカーボンプライシングの具体的なあり方を提言したのは日本で初めてです。
賛同企業には、IT、素材、機械、電子・電気機器、製薬、通信、食品、小売、建築、金融・保険など様々な分野をリードする、東証プライム上場企業61社を含む多くの大企業が含まれています。積極的に気候変動対策を進める企業グループである日本気候リーダーズ・パートナーシップも名を連ねました。
また地方自治体からは、近江八幡市、川崎市、京都市、札幌市、世田谷区、東京都、豊中市、浜松市、武蔵野市が賛同を表明しています。更に、全国消費者団体連絡会、創価学会などの各種団体、大学・研究機関、NGO/NPO、若者団体など多様な非国家アクターが賛同しています。
強い危機感・切迫感が非国家アクターの取り組みを「アドボカシー」という新たな局面へ
今回の検討への積極的な関与と賛同の輪の広がりは、企業などの非国家アクターによる脱炭素の取り組みが、政府に具体的な政策変更を求めるアドボカシーにまで拡大する新たな局面を迎えたことの象徴です。同時に、これだけ多くの非国家アクターが、日本のカーボンプライシングと排出削減の現状に対して強い危機感・切迫感を共有していることの証拠でもあります。
政府はこうした非国家アクターの声に真摯に耳を傾けるべきです。折しも11月30日からは第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)が開催されています。そこでは、パリ協定の進捗評価制度であるグローバルストックテイクの成果として、各国に排出削減目標と政策の一層の強化を求めるメッセージが期待されます。今や、世界全体で気候変動対策の更なる加速が必要なことは、国際社会のあらゆる人の眼にも明らかでしょう。その不可欠の要素として、日本においても、本提言の示す6原則を満たすカーボンプライシングが機を逃さず導入されることを求めます。
リリース本文 PDF
別紙1 JCIカーボンプライシング提言 PDF
別紙2 メッセ―ジ賛同団体一覧 PDF
賛同団体からのコメント(50音順)
参考1:JCIカーボンプライシング提言 参考資料 PDF
■2024年5月24日更新:新たに24団体が賛同し、合計210団体となりました。
<更新版>メッセージ賛同団体一覧 PDF
関連記事:【303団体が賛同】JCIメッセージ:再生可能エネルギーとカーボンプライシングで二つの危機を打開する
気候変動イニシアティブ(JCI)メンバーによるカーボンプライシング提言
2030 年 GHG 排出削減目標と国際競争力強化の同時達成に向けて
2023年12月5日
気候変動イニシアティブ
政府は、2050 年・2030 年の温室効果ガス排出量削減目標と、安価かつ安定したエネルギー供給、経済成長の同時達成を目指して、グリーン・トランスフォーメーション(GX)の実現を目指している。その一環として、GX 経済移行債による投資支援や化石燃料賦課金、GX-ETSから成る「成長志向型カーボンプライシング構想」が打ち出された。
長年議論されてきたカーボンプライシングの導入に道筋がつけられたことは、大きな前進として歓迎できる。その上で更なる改善を施すことによって、国際的に求められている規模での排出削減に向けて、強力な推進力とすることが期待される。
政府は現在、制度の具体化を進めているが、私たちは、特に以下の 3 つの観点に留意することが必要と考える。
- 国の温室効果ガス排出量削減目標、とりわけ 2030 年目標の確実な達成: 現在示されている自主的な制度では排出削減効果が限定的になり、また導入も遅いため 2030 年削減目標が未達に終わる懸念がある。日本が世界に公約した目標が確実に達成でき、更に野心的な排出削減を求める国際的潮流に合致するような制度が必要である。
- 排出削減に取り組む企業に不利益のない公平な制度:自主的な制度参加では、コストを負担して排出削減に取り組む企業が、参加しない企業に競争上劣後し、不利益をこうむる可能性がある。一定の要件に合致する全ての企業が必ず参加する公平な制度が求められる。
- 日本経済の競争力の強化に貢献する制度:不十分な炭素価格では、日本の企業が炭素国境調整措置(CBAM)の対象となることや、国際的なサプライチェーン・投資先から除外されるおそれがある。国際水準での排出削減と再生可能エネルギーの導入が進み、ビジネスの場としての日本の魅力を向上させる制度が必要である。
2030 年までの残り時間は少ない。その中で実効性の高いカーボンプライシングを実現していくためには、既に世界で広く導入されている炭素税と排出量取引制度の経験を十分に活かし、化石燃料賦課金、GX-ETS をより良いものとすべきである。具体的には、今後の制度設計を適切に方向づけるために、私たちは、次の 6 つの原則が満たされることを強く求める。
(1) 2030 年削減目標達成に向けて 2025 年を目処として実効性の高いカーボンプライシング制度を導入するべき
パリ協定の掲げる 1.5 度目標の達成のため、IPCC は世界全体で 2035 年までの GHG60%削減(2019 年比)が必要であることを示した。こうした知見を踏まえ、日本の 2030 年削減目標を必ず達成するために、現在のスケジュールを前倒しし、2025 年を目処に実効性の高いカーボンプライシング制度を導入するべきである。
また、排出削減の実効性を高めるため、世界で先行する排出量取引制度と同様に、GXETS には対象部門からの総排出量の上限(キャップ)を設定し、1.5 度目標の実現にむけたタイムラインに沿って次第に強化されていく制度とすべきである。
(2) 一定の要件を満たす企業を一律に制度の対象として公平性を担保するべき
排出量取引制度では、公平性を期すために、排出量やエネルギー使用量など、一定の要件を満たす企業全てを一律に制度の対象とするべきである。また、化石燃料賦課金とともに、社名公表をはじめとした履行確保の措置を導入するべきである。
両制度の導入にあたっては、二重負担を回避し、事務負担が抑制されるような制度設計が求められる。それぞれのメリット・デメリットが相互に補完され、幅広い企業が削減に取り組む、より公平かつ効果的な制度設計としていく。
(3) 世界に比肩する水準で将来の炭素価格を明示するべき
企業の投資判断に役立つ形で、IEA が示す 2030 年 130 ドル/t-CO2 など、国際的な水準に比肩する炭素価格を目指すことを導入時に明示するべきである。
導入後には、今後の科学的知見の充実や国際議論に沿った適時の見直しが必要となる。また、先進国である日本は、更に野心的な炭素価格を目指すことも望ましい。
他方、GX 推進法では化石燃料賦課金の賦課金単価に上限を設けている。エネルギーに係る負担が過度にならないような配慮は必要であるが、炭素価格を国際的な水準に適合させる上で支障になるのであれば、当該上限は撤廃されるべきである。
(4) 国際的なルールに適合した制度とするべき
国内外でのルールの違いにより、企業に二重の事務負担や競争上の不利益が生じないよう、化石燃料賦課金と排出量取引制度は、国際的なルールに適合した制度とするべきである。また、EU の炭素国境調整措置(CBAM)の対象にならないためには、他国・地域と同水準かつ同質の炭素価格を目指して、制度対象の一律性と広さ、履行確保措置、炭素価格の引き上げペースなど基本的な制度設計を行う必要がある。
制度設計においては、他国・地域で得られた教訓を十分に踏まえるべきである。特にクレジットの使用のあり方は、国際的な動向を受けて慎重に検討するべきである。
(5) 公正な評価のもと排出削減が困難な企業の削減を政府収入により支援するべき
既存技術では排出削減が困難な業種での新技術の開発・普及や、エネルギー転換に伴う中小企業等の負担への対応、再エネ・省エネの導入拡大に向けた取組みの加速を、カーボンプライシング制度の収入で支援するべきである。その際には、1.5 度目標に不整合な技術(石炭火力発電でのアンモニア混焼など)を支援しない等、一定の条件で絞り込む必要がある。
また、各支援で見込まれる排出削減の量や時点を明確にした、メリハリの利いた分配が必要である。更に、当該支援は制度設計全体を歪めないようにしなければならず、過渡的なものとすべきである。
(6) カーボンプライシングの立案・評価・更新では透明性を確保するべき
カーボンプライシングに利害関係を有する社会の広範なアクターが、専門的知見や国内外の動向、危機意識、生物多様性や資源循環などの他領域との関係性を共有・議論する場を定期的に設けるべきである。その構成は、特定の業種の企業に偏ることなく、幅広い非国家アクターの参加が求められる。
なお、2030 年までの残り時間が少ないことに鑑みて、導入に向けた議論は迅速かつ効率的なものにしなければならない。
以上
賛同団体⼀覧(50音順)
(計 210団体 うち 企業 153、⾃治体 9、団体・NGO等 48)
※2024年5月24日、24団体を追加し、合計210団体に更新
企業(計 153)
アイ・グリッド・ソリューションズ | ジャパンリアルエステイトアセットマネジメント | |
アイティフォー | ジャパン・リニューアブル・エナジー | |
IDEC | ジャムコ | |
アサヒグループホールディングス | シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社 | |
朝日新聞社 | 上新電機 | |
アジアゲートウェイ | 信金中央金庫 | |
アシックス | 新菱冷熱工業 | |
アスエク | すかいらーくホールディングス | |
アスクル | 住友重機械工業 | |
UPDATER | 住友ファーマ | |
アドバンテスト | 生活協同組合コープかごしま | |
アドライト | セイコーグループ | |
アミタホールディングス | 積水化学工業 | |
アムンディ・ジャパン | ゼネシス | |
荒川化学工業 | ゼロボード | |
アンリツ | ソニーグループ | |
iiie | ソフトバンクグループ | |
E-konzal | ソーラーワールド | |
イースクエア | 第一生命ホールディングス | |
イオンモール | ダイダン | |
イケア・ジャパン | ダイテック | |
Vizane KK | 大和ハウス・アセットマネジメント | |
ウェイストボックス | 大和ハウスリート | |
ウォータースタンド | 高砂熱学工業 | |
内海産業 | 宝塚すみれ発電 | |
ウフル | 竹中工務店 | |
AGC | 脱炭素化支援 | |
AESCジャパン | 地域計画建築研究所 | |
AHC | 地方グリーンプロジェクト支援研究所 | |
エーザイ | 中外製薬 | |
エコ・プラン | デジタルグリッド | |
エコワークス | テスホールディングス | |
エスプールブルードットグリーン | TERA Energy | |
EDO KAGURA | テラスエナジー | |
NTTデータグループ | 東亜建設工業 | |
エナジー311 | 東洋インキSCホールディングス | |
エネクラウド | TREE | |
エフピコ | ニコン | |
オークネット | 西松建設 | |
OKYA | 日清食品ホールディングス | |
小田原かなごてファーム | 日東工業 | |
office 3.11 | ニューラル | |
オフィスTMC | ネクストレベルジャパン | |
オリックス・アセットマネジメント | 野村不動産投資顧問 | |
カインズ | パタゴニア日本支社 | |
花王 | パナソニックホールディングス | |
梶原鉄工所 | ビジネスブレイン太田昭和 | |
仮設機材工業 | booost technologies | |
カルビー | フォーバル | |
樹昇 | フォスター電機 | |
キッコーマン | 富士フイルムホールディングス | |
キリンホールディングス | 古河電気工業 | |
グリーナー・スペース・プランニング | ポーラ・オルビスホールディングス | |
グリーンネッツ | 北海光電子 | |
グリーンパワー工業 | 前田建設工業 | |
クロスフォー | 前田道路 | |
ケイティケイ | まち未来製作所 | |
Codo Advisory | 松屋 | |
コーセー | 三井住友建設 | |
国際航業 | 三菱地所投資顧問 | |
コニカミノルタ | 宮城衛生環境公社 | |
South Pole Japan | 明治ホールディングス | |
栄鋼管 | 森永乳業 | |
サカタインクス | 八基通商 | |
サッポロホールディングス | ヤマト住建 | |
サントリーホールディングス | ヨロズ | |
サンメッセ | LINEヤフー | |
三洋商事 | リクルートホールディングス | |
サンライズ | リコー | |
CSRデザイン環境投資顧問 | リニューアブル・ジャパン | |
SequencEnergy | りんかい日産建設 | |
J.フロントリテイリング | ルネサスエレクトロニクス | |
塩野義製薬 | レッドマルスADベンチャー | |
滋賀銀行 | レンゴー | |
しずおか焼津信用金庫 | ローム | |
シチズン時計 | ワコム | |
島津製作所 |
自治体(計9)
近江八幡市 | 東京都 |
川崎市 | 豊中市 |
京都市 | 浜松市 |
札幌市 | 武蔵野市 |
世田谷区 |
団体・NGO等(計48)
上田市民エネルギー | 市民気候ロビー・ジャパン | |
うつくしまNPOネットワーク | 湘南・省エネネットワーキング | |
エネ技術士ネット | 消費者市民社会をつくる会 | |
エコワーク実践塾 | Studio Ichigo | |
エシカル協会 | 聖心女子大学グローバル共生研究所 | |
SLSV CES研究所 | 世界自然保護基金ジャパン | |
大磯エネシフト | 世界連邦運動協会 | |
大阪YMCA | Sera Creations | |
kameplan architects | 全国消費者団体連絡会 | |
環境エネルギー政策研究所 | 創価学会 | |
環境文明21 | 太陽光発電協会 | |
環境ベテランズファーム | 地球環境市民会議 | |
気候ネットワーク | 地熱情報研究所 | |
Climate Action Network Japan | 千葉商科大学 | |
Climate Youth Japan | 徳島地域エネルギー | |
グリーンビルディングジャパン | 日本PVプランナー協会 | |
群馬バイオマス活用協議会 | 日本気候リーダーズ・パートナーシップ | |
原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟 | 日本溶剤リサイクル工業会 | |
コレクティブ・アクション | 農都会議 | |
コンシューマーズ京都 | Peace&Nature | |
サステナビリティ日本フォーラム | 福井小水力利用推進協議会 | |
CDP Worldwide-Japan | 北海道グリーン購入ネットワーク | |
自然エネルギー財団 | 北海道再生可能エネルギー振興機構 | |
自然エネルギー市民の会 | 北海道グリーンファンド |
門川 大作 様 京都市長
京都市は2030年民生部門CO2ゼロを実現する「ゼロカーボン古都モデル」を創出し、京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させる取組にチャレンジしています。2030年まで残された時間はあと6年しかありません。
クリーンエネルギーへの転換を加速し、世界共通の目標である1.5℃を達成するためには、すべてのステークホルダーが削減を進められる公平で実効性の高いカーボンプライシング制度の早期導入が必要不可欠です。
豊かな脱炭素社会の実現に向けて、共々に力を尽くしてまいりましょう。
鈴木 美佳子 様 株式会社リコー ESG戦略部 コーポレート執行役員 ESG・リスクマネジメント担当
地球沸騰化と言われるほどに気候危機は深刻さを増しています。私たち全員が、2030年までの取り組みが地球の将来を大きく左右するとの認識を改めて共有し、スピード感を持って具体的な行動を起こさなければなりません。そのためには、カーボンプライシングをはじめとする1.5度目標の達成に資する制度・政策を総動員して、自治体や企業、国民の取り組みを後押しする必要があります。
また、ビジネスのあらゆる側面において、1.5℃目標達成に資する取り組みが必要要件となりつつあり、日本の取り組みの遅れは企業の競争力にも悪影響を与えます。リコーグループは、すべてのステークホルダーとともに脱炭素社会の実現に向けた取り組みとアドボカシー活動を進めてまいります。
原科 幸彦 様 千葉商科大学 学長
脱炭素には化石燃料でも原発でもない、自然由来の再生可能なエネルギーである、自然エネルギー社会に変えることが必要です。社会は計画と自由で動いており、市場経済メカニズムを活用するカ-ボンプライシングにより、2030年目標に向け脱炭素を加速します。しかし、一部の主体が自主的にこれに応じるだけでは、正直者が馬鹿をみてしまう。市場は適切なルールがあってこそうまく機能します。公正なルールのもと多様な主体が、CO2削減を進めることのできる仕組みのためには、カーボンプライシングを社会制度として導入することが不可欠です。