写真提供:環境省

 

6月10日(水)、気候変動イニシアティブ(JCI)は、小泉進次郎環境大臣とオンライン会合を開催しました。会合には、環境省からは小泉環境大臣のほか、佐藤ゆかり環境副大臣、八木哲也環境大臣政務官も同席。JCIからはメンバー企業のCEOら7名と代表及び事務局三団体が参加し、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした経済停滞からの回復を、気候変動対策とともに進める「グリーン・リカバリー」について、意見交換をしました。

会合では、各参加者から、グリーン・リカバリーに向けた自社の取組み及びそれを一層進めていく上での政府への期待が、小泉大臣に向け発信されました。
会合の議論の概要は以下のとおりです。

出席者 ※敬称略

環境省
小泉進次郎  環境大臣
佐藤ゆかり  環境副大臣
八木 哲也  環境大臣政務官

JCIメンバー企業 ※50音順
青井 浩   丸井グループ株式会社 代表取締役社長 代表執行役員 CEO
大関 洋   ニッセイ アセット マネジメント株式会社 代表取締役社長
川崎 素子  富士フイルムホールディングス株式会社 執行役員
鈴木 悌介  小田原箱根商工会議所 会頭/株式会社鈴廣蒲鉾本店代表取締役副社⻑
銭谷 美幸  第一生命保険株式会社 経営企画ユニット部長
三宅 香   イオン株式会社 執行役 環境・社会貢献・PR・IR担当
山下 良則  株式会社リコー 代表取締役 社長執行役員・CEO

JCI代表/事務局
末吉竹二郎  JCI代表、国連環境計画・金融イニシアティブ 特別顧問
大野 輝之  自然エネルギー財団 常務理事
森澤 充世  CDPジャパン ディレクター
山岸 尚之  WWFジャパン 自然保護室 気候変動・エネルギーグループ長

 

再生可能エネルギーの推進
RE100やSBTの1.5℃目標の達成のためには、需要家が再生可能エネルギーを十分に調達できる環境が必要であるが、欧州などに比べるとまだまだ調達が困難であるという課題が上げられました。新電力を含む若い世代の環境関連のスタートアップに対する投資への優遇措置の拡大や、系統連系の拡充などを通じて、ぜひ政府として再エネがより普及するようリーダーシップをとってほしいという要望が伝えられました。

地域における経済循環の重要性
東京のように人が過密に集まる場所が課題となっている今、エネルギーや食べ物などの地産地消を通じた経済の地域循環の重要性が訴えられました。日本にはそうした可能性をもつ地域がたくさんあり、脱炭素社会への移行に向けて、コロナの前に戻していけないことは何か、新たに取り組むべきことは何かを考えるときだと述べられました。

排出量のリバウンドをさせない
2008~2009年にかけての金融危機の影響の際にも、排出量は減りましたが、その後、排出量はリバウンドして結果としてさらに増えてしまいました。今後の復興では排出量をリバウンドさせないという視点が重要だという指摘がありました。

自家発電のCO2フリーの燃料インフラ
エネルギー消費が大きい業種では、脱炭素化を進めるために、再エネの調達に加え、自家発電のためのCO2フリーの燃料確保も必要であり、水素の活用も含め、それらの燃料を十分に確保するためには、政府によるインフラ拡充が不可欠であるという要望も出されました。

グリーンな投資
機関投資家からは、金融・投資においても気候変動対策の重要性が世界的に叫ばれている中、企業との対話、グリーンな投資商品の開発などを通じて、ESG投資を一層進めていくという意気込みが述べられました。その際には、投資がグリーンであるかどうかの見極めに関する議論も重要であるとの指摘や、UNEPで議論されているように、ESG重視が受託者責任としての義務であるかどうかにまで踏みこんだ議論も重要だという指摘もありました。来年のダボス会議に関するテーマとしても、重要となってきていることも共有されました。また、現状まだ十分に進んでいない年金の投資促進を進めていく必要があるとの課題も述べられました。

石炭政策について
このコロナ危機によってもたらされたCO2排出量の減少を、リバウンドさせないために、再エネの普及に加えて、石炭利用の在り方を変える必要性が訴えられました。すでに見直しの検討が進められている海外への石炭火力発電輸出に加え、国内の石炭火力発電利用についても、ぜひ見直しに向けて小泉大臣にイニシアティブをとってほしいという要望が伝えられました。

末吉竹二郎 気候変動イニシアティブ代表は、気候危機に立ち向かう世界のリーディングカンパニーを事例とともに示し、その背景には国がそれらを後押しする政策を打ち出していることがあると指摘しました。日本が脱炭素化を先導していくためには、政府がそれを支援することが重要であり、その流れを、グリーン・リカバリーを進めていく上でぜひ作ってほしいと述べました。さらに、こうしたオンラインを通じた非政府アクターと政府との対話を「ニューノーマル」としてぜひ続けていきたいと伝えました。

小泉環境大臣は、需要側の再エネ利用の促進について、出席者と意見交換をされました。また、2050年ゼロカーボンを宣言した日本の自治体が約100自治体に増えていることにふれ、地域から再エネの「需要」を掘り起こしていくことで再エネの導入を進めるため、自治体への後押しはこれからも拡充していきたいと述べられました。
また、会合で多くの参加者が口にした「CO2排出をリバウンドをさせてはいけない」ことに触れ、その重要性が改めて認識されました。その上で、これから全力で環境省が旗を振っていくとともに、今後ともJCIと連携を深めたいと述べられました。

 

(文責:気候変動イニシアティブ事務局)

 

環境省ウェブサイト 報道発表資料
「気候変動イニシアティブと小泉環境大臣との意見交換会」の結果について